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『虚業成れり−「呼び屋」神彰の生涯』刊行裏話

第9回 神さんの7回忌

 今日5月28日は神さんの命日。本を出してから、神さんの墓に報告しなけばと思っていたのだが、行けないでいた。命日でもあるのでということで、青山墓地の近くにある、龍泉寺を訪ねた。赤坂高校の裏にあるこの墓地を訪ねるのは2回目になる。高校生たちのざわめきは聞こえるものの、静かなたたずまいのお寺だ。
 入り口近くの神さんの墓には、すでにお花、そして栓が開けられたアサヒスーパードライの缶ビールが供えられていた。
 お墓の前に進み出たとき、おもわず「神さん」と呼びかけてしまった。このときなにか胸にこみあげるものがあった。墓前でじっと手をあわせて、本をやっと書き終えましたという報告をひとりつぶやいていた。
 どれだけ神さんのことを知らせることができたかは、まだわからない。墓前で手を合わせながら、やはり神さんと会いたかったという思いがこみあげてくる。こうしてお墓の前に報告するのではなく、実際に神さんと会って報告できたらどれだけ良かったかと思う。
 墓前を去るとき、自分はまたひとり『神さん、ありがとうございました』とつぶやいていた。これはあとがきの最後の言葉でもあった。


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