月刊デラシネ通信 > サーカス&パフォーマンス > パフォーマンス > チュルタギがやって来る

週刊デラシネ通信 今週のトピックス(2001.04.13)
チュルタギがやって来る

 「デラシネ通信」で何度か紹介している、韓国の伝統的綱渡りチュルタギが、4月21日・22日開催される野毛大道芸フェスティバルに出演するため、来日します。
 公演は、1日2回福富西公園で行われます。野毛大道芸フェスティバルは、野毛本通りだけでなく、横浜みなとみらい地区などかなり会場が分散していますので、前もって場所を確認して行った方がいいと思います。詳しくは野毛大道芸のHPをご覧下さい。出演者一覧や、会場の情報などを知ることができます。
 これに先立って産経新聞横浜版に掲載される予定の『飲み食い交流記シリーズ』の中でクマが書いた記事を紹介します。ここで出てくる「李さんの台所」は、会場となる福富西公園の近くにあります。リーズナブルな値段で本格的な韓国料理が食べられる店です。チュルタギを見たあと、寄ってみて下さい。


「韓国綱渡り(チュルタギ)の名手−キム・デギュン」
(産経新聞横浜版『飲み食い交流記シリーズ』に掲載予定の記事)

横浜・福富町『李さんの台所』 電話 045(253)3044

 福富町界隈には、ハングル語の看板をかけた店がたくさん立ち並んでいる。その中の一軒『李さんの台所』は、本格的な韓国料理が楽しめるところ。ここで韓国風すきやきのプルコギとイカ炒めを注文した。十月初めて行った韓国の安東市で食べて、とても気に入った料理だ。プルコギは焼き肉とはまたちがう肉の風味を楽しめるし、イカ炒めは舌にピリッとくる辛さがたまらない。
 安東で、鍋にひっついたイカ炒めをつまみに名物の焼酎を飲みながら、キムたちと熱く語りあったことが思い出されてくる。
「綱の上では風をつかむ感覚が大事なんだ」とキムは語る。風をつかみ、宙に舞う綱渡り−チュルタギは、韓国ではマダン(広場)ノリ(芸)として、千三百年前から大道芸として、庶民に親しまれている。キムは、この芸をいまに伝える最後の芸人だ。
 キム・デギュン、三十二才。今年韓国の無形文化財五十八号に指定された。最年少の人間国宝である。九才の時に見たチュルタギに魅せられたキムは、二十年以上綱のうえを職場としている。チュルタギの特色は、しなやかな綱の上のジャンプ。ワイヤーとちがって、太綱をつかうことにより、弾力を生かし、尻や、足を大きく開いたまま股で、また膝で反動をつけてジャンプする技は、浮遊するなかで、美しさ、気品さを醸し出す、「舞い」と言っていいのではないだろうか。
 人は鳥となり、宙で舞う、それを実現するのがチュルタギだ。だがチュルタギの魅力はそれだけでない。広場で円座になり、観客と一体となって、演じ興じること、そう、チュルタギは究極の大道芸なのだ。
 キムたちは、2002年に南北朝鮮を分ける38度線で、国際綱渡りフェスティバルを開催することを企画している。エリア・カザンの映画『綱渡りの男』は、チェコの国境を舞台に、国境を越え、西側に逃げようとしたサーカス団の話を描いたものだったが、キムたちは、これとは逆に国境を越え、民族統一の願いを実現しようとしている。21世紀の『綱渡りの男』キム・デギュンは、大きな夢をもち、青空に向けてジャンプしようとしている。
 キムと仲間たちは、野毛大道芸フェスティバルに参加する横浜にやってくる。このフェスティバルには、キムたちの他に、世界から綱渡り芸人を招き、綱渡りスペシャルをすることになっている。野毛での公演は、キムの南北朝鮮統一の夢を実現する第一歩となるはずだ。


ひとつ上のカテゴリーへ
週刊デラシネ通信一覧へ
デラシネ通信 Top