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早稲田大学『ロシア芸術の現在』講義通信

 早稲田大学文学部の『ロシア芸術の現在』という講座で、三たび講義をすることになりました。今回は、6月10・17・24日、7月1日の4回です。講義のダイジェスト版を紹介するつもりです。

随時「カフェ・クマ」に掲載しています。


第1回 6月10日

2003年6月5日 木曜日 4:03p.m.

6月10日午後2時40分から、早稲田大学文学部38号館AV室で『ロシア芸術の現在』−「ロシア大衆芸能編」の授業が始まります。私の担当は4回です。去年・一昨年と二回やっているので、多少今回は内容を代えようかと思っています。
一回目は、「ロシア芸能とプロモーター」について、話すつもりです。いま執筆中の神彰について、神が憧れていたロシアのプロモーターで、ロシアバレエの創始者、ディアギレフについて触れるつもりです。
なお今シリーズの新しい試みとして、二回ぐらいライブで実際のパフォーマンスを見てもらうと思ってます。第一回目は、山本光洋氏にやってもらうことになりました。光洋ワールドを垣間見てもらい、学生たちが、どんな感想を持つか、とても興味があります。
何本かビデオも流す予定です。ロシアバレエのビデオをいま探しているところです。この他にカバチッタ第一回目の公演のビデオも流すつもりです。

2003年6月12日 木曜日 2:55p.m.

6月10日午後2時40分より、三年目を迎えたこの授業の一回目があった。今回はいままでとりあげなかった、ロシア芸術・芸能の紹介につとめたプロモーターを紹介した。
まず一人目めは神彰。神が、荻窪の下宿先で『バイカル湖の畔』を聞いてから、ドン・コサック合唱団を呼んだあたりのことを中心に紹介。
二人目はディアギレフ。彼については1998年にNHK教育テレビで放映された「ダンスの世紀」のビデオを見てもらった。約20分ぐらいだったが、学生たちは熱心に見ていたように思う。
そして最後に特別ゲスト、山本光洋に15分マイムのショーを演じてもらう。にわとり、磁石、コテツちゃん、マネキンをテンポ良く演じた。ほとんど学生は光洋のことは知らなかったようだが、受けはかなり良かった。来年1月の光洋ソロライブを少し宣伝。
配布したカバチッタのチラシについて少し説明。一回目のカバチッタの王輝さんの綱渡りのところをビデオで見せて、お開き。
今年の学生は、あまり寝ていない。去年は20人ぐらいが寝ていたのだが・・・


第2回 6月17日

2003年6月16日 月曜日 0:00p.m

第二回目の講義のテーマは「サーカス」です。サーカスといっても間口は大きいので、今回はサーカスと演劇、音楽とのジョントについて焦点を絞ってみようと思います。ロシアアバンギャルドとサーカスあたりを切り口にして、今年横浜で公演があった『ミステリア・ブッフ』のビデオを見てもらったり、いま公演中の『シャングリア2』の話をしたりしようかと思っています。
サーカスと他ジャンルのコラボレーションということが、大きなテーマということです。
ビデオは、『ミステリア・ブッフ』の他に、『シャングリア1』、ドイツのカバレットサーカス集団『GOSH!』を見せようかと思っています。
なお当日は、デラシネ通信にもある「サーカス映画リスト」を配布する予定。
前回の授業では山本光洋のパフォーマンスが人気だったが、今回はお休み。三回目の6月24日に、Kajaに出てもらいます(予定)。

2003年6月18日 水曜日 5:30p.m.

6月17日二回目の授業があった。授業の前に、前回出席カードの裏に、学生が書いた感想を見せてもらう。山本光洋のマイムに対する感想がほとんど。それもみな初めて見て、こんな面白いものがあったのかというものばかり。光洋ちゃんもやった甲斐があっただろう。
今回は、まず配布したサーカス映画リストについて解説。お薦めの作品ということでチャップリンの『サーカス』、ボリス・バルネットの『レスラーと道化師』、『保護なき純潔』、『ジュリコ・マゼッパ伝説』をあげておく。次にロシアアヴァンギャルドとサーカスの関係を軸に、サーカスと演劇について話す。この前神奈川県民ホールでやった『ミステリアブッフ』のビデオを飛ばしながら見てもらう。サーカスと他のジャンルの芸術との関わり合いということで、ダンスについてはドゥフクレの話をして、ユーミンの『シャングリア1』のビデオを見てもらう。そのあと今回のシャングリア2の感想を話す。
そのあと、カバレットチッタの試みについて説明、めざす方向性として、ドイツの『Gosh』のビデオを見せたところで時間。
今日は必読書ということで、去年出た『メイエルホリド・コレクション』をあげておく。


第3回 6月24日

2003年6月25日 水曜日 3:32p.m.

6月24日三回目の授業。テーマはクラウン。前日の歌声食堂で、30曲近く大きな声はりあげて歌ったもんだから、声が出ず。しかも体調は最低ということで、今日はビデオを中心。
まずはミミクリーチのビデオをみてもらったあとに、エンギバロフのビデオを20分くらい見てもらう。エンギバロフのクラウニングのもつ意義について、少し解説。
そのあとで次回のフール祭に出演することになっているBPズームのプロモーションビデオを見せる。
そのあとにKajaのパフォーマンス。Kajaのパフォーマンスに学生の目は釘付け。楽しんでいたようだ。こうした反応を見ていると、いま学生諸君は、生で大道芸なと見たことがない人がほとんどではないかという気がしてくる。
授業が終わってから、ひとりの学生が大阪のHepでBPズームを2年前に見たと言ってきた。なかにはこんな学生もいるわけだ。
いよいよ来週が最後、少し気合を入れてやらないと。次回はダメじゃん小出がゲスト。

第4回 7月1日

2003年7月2日 水曜日 0:11a.m.

7月1日、自分担当の最終日。今日はロシアポピュラーミュージックの話し。
タトゥ、アクバリウムの話しをしたあと、『キノ』の曲を3曲聞いてもらう。「トロリーバス」については訳詩をプリントで渡しておいた。ツォイが死んだのが20年前の7月など言ったのだが、授業中にこの次の回に講義する先生から、ちがうのではというメモをもらう。確かにツォイが死んだのは、1990年8月15日で、大間違い。あとで訂正。そのあとDDTのビデオを流す。ここまで結構時間をくってしまった。ベルチンスキイの話しを少しして、それから曲を2曲聞いてもらう。これも訳詩をプリントで渡しておいた。ベルチンスキイの歌は結構気持ちいいようで、何人かの学生が気持ちよさそうに寝ていた。このあとカバチッタに出演してくれた石橋さんのことを紹介、カバチッタでベルチンスキイを歌ってところのビデオを流す。音が割れていしまったのが、ちょっとまずかったなあ。そのあとはダメじゃん小出のライブ。この頃よくやっている在日中国人のネタからはいる。最初学生たちはなにがはじまっているのかよくわからなかったようで、笑いも少ない。小出はこのへんのあたりは了解済みという感じで、焦らずに進めていく。この落ち着きに自然に学生も飲み込まれていったようだ。得意のニュースと天気予報から笑いが絶えなくなる。およそ20分のライブ、最終的にはみんなはまったようだ。今日見ていた学生の何人でも小出のライブを実際に金払って見てくれるといいのだけど。
ということで、今回の授業は終わり。
クラウンのことでも、サーカスのことでもあと2回ずつ話せると、もっとまとまりがつくような気がした。学生たちにはやはり間口を広くして、そこで関心をもってもらうというのが大事で、関心を持った人たちに対して、うまくナビゲートしてあげるのが、一番いいと思うのだが、そこまではいけなかったという気もする。参考文献とか、参考になる映画とかそのへんのことをもう少し丁寧に話してあげればよかったのではというのが、大きな反省点かもしれない。ただ3人のライブを見てもらったのは良かったと思う。クラウン、マイム、スタンダップコメディーとかは実際に見てもらわないと、その良さはわからない。その意味では今回のライブは成功したのではと思うのだが・・・・


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