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弟・大島憲治の詩集刊行

 私の弟は、詩人である。その弟大島憲治が、4冊目の詩集『荒野の夢』を出した。

 若い頃は、金子光晴なんかはよく読んでいたが、どちらかというと、詩は苦手な方である。言葉をつきつめ、抽象的な世界をつくるというのが、どうもダメなのかもしれない。やはり自分は散文系なのだと思う。言葉と真正面に対峙するなんて、到底自分にはできないことだと思う、そんな過酷とも思えることに挑む詩人が、身内にいたわけだ。

 大島憲治の詩はどこかノスタルジックである。どこかで見たような風景が突如現れたりして、びっくりするときがある。それは少年時代のノスタルジアといってもいいかもしれない。透明感ただようなかで、極彩色で塗られた風景、そんなものが妙になつかしく感じたりした。

 今回はいつも私の本を装丁してもらっている西山孝司氏と、原稿を見てもらっている田邉道彦氏が、本づくりに加わっている。本づくりの達人が協力したことで、詩集という手触りが感じられる一冊になった。


「荒野の夢」大島憲治
発行:蝶夢舎 / 発売:星雲社 / ISBN: 443405029X
「荒野の夢」大島憲治
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〈水晶の音色 きみの
 開ききった真円の
 瞳孔 荒野の夜に
 パロス生まれの
 純白の裸身が
 ゆっくりと首を回し
 闇のなかに ダヴィデの
 虹彩をきらめかせた〉

――本文より

アドリア海の光と空と風。夢のような、はかない少年期のレミニッセンス。
トーマス・マンの中編を映像化したルキノ・ヴィスコンティ監督の《ヴェニスに死す》に触発され、生のよみがえりの時を謳い上げる。清新澄明なことばで綴る渾身の900行長篇詩。著者最新の第4詩集。

装丁:西山孝司  編集協力:田邊道彦

大島憲治(おおしま・けんじ)
1956年仙台市生まれ。
詩集『イグナチオ教会 風に吹かれる 花のワルツ』 書肆山田 1993年
詩集『センチメンタルパニック』 私家版 1997年
詩・エッセイ・写真集『東京霊感紀行』 竜鱗堂 2004年

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