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サーカスシアター・BINGO
ヌーヴォー・シルクin 大道芸ワールドカップ2005

 

ヌーヴォー・シルク 【サーカスシアター・ビンゴ】 ヌーヴォー・シルク in 大道芸ワールドカップ2005

サーカスシアター・BINGO



会 期 2005年11月1日(火)〜6日(日)
会 場 静岡・駿府公園やすらぎ広場内特設会場
(JR静岡駅より徒歩10分ほど)
入場料 アリーナ指定席 3,500円
ブロック指定席 大人 3,000円/小人 2,000円
(3歳未満無料)
開演時間等、詳細はこちら

世界最高峰のサーカス大国――ウクライナ

 「世界一のサーカス大国はどこでしょう」、こんな質問に対しておそらく大部分の人は、「中国」か「ロシア」という答えるのではないでしょうか?5−6年前だったら確かにその通りなのですが、いまは違います。このふたつの大国をしのぎ、ナンバーワンの地位にいるのは、ウクライナなのです。カナダのシルクドゥソレイユや、ヨーロッパの名だたるサーカスの中心メンバーは、ウクライナ出身のアーティストが占めています。そればかりでなくモンテカルロやパリのサーカスフェスティバルで、上位を独占しているのはウクライナのアーティストたちなのです。なぜウクライナサーカスがこれほどまでに、急成長したのでしょう。
 ひとつにはサーカス学校を中心にしたアーティストを生み出すすそ野の広さがあります。国立キエフサーカス学校では、将来のスターの卵たちがたくさん学んでいます。いま世界的に注目されているこの学校では、4年間びっちり基礎を学ぶほか、マンツーマンで先生と生徒が、ひとつの番組をつくりあげています。才能ある生徒は、卒業を待たずに有名なサーカス団と契約しています。6月の卒業公演は、いま最も新しい芸とアーティストが見られるということで、世界中からプロモーターが集まってきます。さらにソ連時代から世界的に知られている体操やアクロバット体操、新体操などで活躍する若いスポーツマンが、サーカスに続々と転身してきていることがあります。技術の面だけを見ても、間違いなくウクライナサーカスは、世界トップクラスに位置しているわけですが、それだけでなくその成長を支えているのが、若い演出家たちの存在なのです。ただ高度な技をつくるだけでなく、それをいかに見せるか、これはいま新しいサーカスで、最も重要な要素になっているといえますが、この演出面で、豊かな才能をもった若者がどんどん進出し、ユニークでオリジナリティーあふれる芸をつくりあげているのです。若いアーティストの力量と、演出家の才能がドッキングしたことで、ウクライナサーカスは、いまやナンバーワンのサーカス大国になったといっていいでしょう。

サーカス学校から生まれたビンゴ

 今回日本初登場する『ビンゴ』は、こうしたウクライナサーカスの急成長を象徴するカンパニーです。サーカス学校で振付を学んでいたイリーナ・ゲルマンが中心となって結成されたのが、いまから10年前の1996年。演出家のイリーナは当時まだ21才という若さでした。この時集まったアーティストは6人、彼らは当時としてはまったく新しい試みとなる「シアターサーカス」創造をめざします。同じサーカス学校出身で、クラウンとして活躍していたイーゴリ・プロツェンコは、ビンゴのショーを見て衝撃を受けます。若いアーティストたちが、芸をつくるだけでなく、トータルとしてのショーをつくろうとしている、これこそ自分が求めているものだと思ったイーゴリは、クラウンの道を捨て、ビンゴのプロデューサーとなることを決意したのです。
 かつてクラウンであった若いプロデューサーを得たビンゴは、活動の場を海外に求めます。自分たちのつくるサーカスが、どれだけ海外で通用するのか、最初はおそるおそるでしたが、わずかなつてを頼りに、海外に売り込み、ドイツの小さなヴァリエテ(シアターレストラン)などを中心に活動を開始します。
 ダンスや演劇的要素を融合させたビンゴの新しいサーカスは次第に評判になっていきます。彼らに大きな飛躍の場を与えたのは、ロンカリサーカスのオーナーの目にとまったことです。ヨーロッパ最大のサーカス団であるロンカリサーカスは、テントでドイツ国内を巡業するほか、大都市にいくつもヴァリエテ(サーカスレストラン)を持っています。ビンゴは、ベルリンのウィンターガーデン、デュッセルドルフ・シュトットガルトにあるアポロシアターなどの一流のヴァリエテと契約を結ぶことになります。
 知名度が上がるなか、ビンゴに入団したいというアーティストも増え、さらにビンゴは大きく成長、ショーの内容も飛躍的にグレードアップしていきます。世界最大のサーカスコンテストであるモンテカルロサーカスでは、グループによるビンゴショーをつくり、ブロンズメダルを獲得するまでになります。

ビンゴ――進行する美 美ing 静岡から世界へ

 ビンゴがヨーロッパで評判になったのは、洗練された芸が、随所に織り込まれるダンスとミックスすることで、究極の身体美の世界をつくりあげたからです。男女の清らかな愛の世界を謳い上げる「空中ストラップ」や「ハンドスタンドアクロ」、さらには美とエロスが見事に調和する「コントーション」や「空中リング」、トライアングルのオブジェをつかった「ジャグリング」や究極のバランス美「ワイヤーアクト」など、ここでは、身体がつくりだす極限の美の世界が演じられています。
 プロデューサーのイーゴリは、ビンゴは発展途上のグループであると言います。メンバーを常に入れ替え、さまざまな試みにトライすること、それがいまのビンゴには重要だというのです。ビンゴにとって今回の静岡公演は、世界へ向けて本格的に乗り出す、第一歩となります。そのために今年ドイツ各地で公演し、人気を博している番組に加え、ふたつの強力な番組をもってくることにしました。来年のサーカスコンテストに出場依頼がきているふたりの女性が、ふたつのブランコを使い、まるでシンクロスイミングのような息のあった演技を見せる「デュオ・シンクロ・トラペーズ」、いくつものローラーのうえでの鮮やかなバランス芸「バランス・オン・ザ・ロール」を加え、まさにビンゴ最強の番組をもって、静岡公演にのぞみます。
 静岡公演をひとつのステップにし、12月にはドイツでオーケストラとのコラボレーション、さらには来年30周年を迎えるモンテカルロサーカスフェスティバルのために、スペシャルショーを演じることも決まっています。
 カナダのケベック州から生まれ、世界を席巻したシルクドゥソレイユも最初は若い小さなカンパニーでした。ビンゴは、第二のシルクドゥソレイユになる、あるいはそれを超えるカンパニーになる可能性を秘めているといっていいでしょう。
 そしてその一頁は静岡からはじまるのです。


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