月刊デラシネ通信 > その他の記事 > 今週買った本・読んだ本 > 2004年8月1日

今週買った本・読んだ本 8月11日

モスクワ市警殺人課分析官アナスタシヤシリーズ3「死とほんのすこしの愛」
著者 アレクサンドラ・マリーニナ / 訳 佐々洋子
出版社 光文社(光文社文庫) 定価 629円
読んだ動機 奥さんから借りる

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 ロシアのベストセラー女流作家マリーナの人気シリーズの翻訳もの。光文社文庫では3冊目だが、ハードカバーを含めるとこれが5冊目の翻訳になる。前作「無限の殺意」で、長年付き合っていたアレクセイと結婚を決意したアナスターシャの結婚式場(ロシアでは戸籍登録所)で起こった殺人事件をめぐるミステリー。ずいぶん手慣れた感じになってきた。登場人物が犯行に関係する人、容疑者以外は、すでに顔なじみになっているということも大きいのかもしれない。ミステリーの中味自体は、それほど夢中になるという感じではないのだが、アナスターシャの同僚たちが、この作品でずいぶんと生き生きとしてきた感じがする。だからしっくりと楽しく読めたのだと思う。大好きな87分署シリーズのデカたちを思い起こすような、みんなどこかすねに傷もつ愛すべき捜査官が、脇役をしっかりと固めはじめた、それがこの作品の成功につながっているのではないかと思う。訳文自体にもリズムがでてきたような気がする。これは前作から感じたこと。佐々さんの訳が、マリーニナには合っているのではないだろうか。あとがきを読むと、まだ次の作品が翻訳されるかどうかは未定のようだが、ぜひ翻訳してもらいたい。
 モスクワの友人の話だと、このシリーズのテレビドラマがなかなか面白いとのこと。
 このシリーズの面白さのひとつに、ロシア市民の生活の断面が描かれていることがあるのだが(前々作の「アウェイゲーム」では、保養所のしくみがわかって面白かった・・)、今回は結婚の儀式について、じっくりと書き込まれている。なかなか参考になった。


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