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クマの観覧日誌

『planBコメディーナイト(プラコメ) Vol28』

場所 plan B(中野富士見町)
日時 2000年11月16日 午後7時半からおよそ90分
出演 Men at Work(こうじ、重森一、ケッチ!、ちから),Macoccha(まこととちい),
    シルブプレ,稲垣篤希,ケッチ!,わがし,ななな,重森一,Dai丸百貨店


 1998年3月から私のプロデュースではじまった、若手のパフォーマーたちを集めてのヴァラエティーショー。ストリートパフォーマー、クラウン、マイムを本職としている芸人たちが、ふだん営業ではできないネタ、ほんとうにやりたいネタを小さなステージで、毎月やろうということからはじまったこのショーも、28回目を数えている。

 最初は5組で始まったが、いまでは10組ちかくのパフォーマーが集まるようになってなかなかの賑わいをみせている。ここで毎月出演しているうちに、腕をあげる芸人もいれば、2〜3回出演して、この場所は自分のやる場ではないと、去っていくものもいる。めいめいが自分の判断で決めていくことで、プロデュースといっても、こちらからはアドバイス程度のことしか言っていない。要は、パフォーマー自身がここで何かを得るような場づくりをしているだけだ。ここまで続いているのは、それなりに若手の芸人たちの切磋琢磨する場になっているからなのではないかと思う。

 3年目を迎え、『プラコメ』も新旧の交代時期にきているような気がする。すでに立ち上げ当時のメンバーのうち、何人かは卒業ということで、ほとんど出演しなくなった者もいる。そしてここ数カ月新しいメンバーの出演がめだっている。私にとっては、パフォーマーたちが成長していく過程を見るのが、『プラコメ』を見るなによりの楽しみになっている。

 今回は二組が、初参加。二組ともなかなかの熱演で、今後が楽しみだ。

 まこととちいのコンビ、Macocchaは、ランニングコント『未来日記』を4本見せてくれた。まことが、本を読みながら、ちいがそのストーリーにしたがってマイムで行動するという、わりとありきたりの手法をつかったコントなのだが、なによりもちいが身体を張った演技で、まことのセリフに振り回される姿を熱演しているのが、いい。いままでこうした身体を酷使するコントはなかっただけに、とても新鮮だったのと、ちいのひたむきさが目に光った。ふたりともアクロバットができるようなので、どんどん身体をつかったコントを見せて欲しい。

 大阪からわざわざやってきた稲垣篤希も、不思議な味のコントを見せてくれた。この男、舞台に出てきただけで、笑いをとれる独特の雰囲気を持っている。自分がバッターになって、お客さんと野球の勝負をするというネタなのだが、お客さんがボールを投げようとすると、タイムをとったりする、その間になかなか味がある。演技というよりは、いるだけで可笑しい奴、そんなキャラクターだ。

 今回の公演では、シルヴプレとなななのコントが良かった。シルヴプレは、男女ペアのマイムのコンビなのだが、初出演の前回は、小学生に扮したふたりが、男女の微妙な心理のやりとりを演じた。こうした男女間の出来事をネタにしたものは、いままでほとんど『プラコメ』では演じられなかったので、それがとても新鮮だった。今回は、同じように男女間の機微を、赤いロープをつかって演じたところがミソ。黒のパンツに白のトレーナーを来た男女が、赤いロープで結ばれ、それをお互いにたぐりよせたり、はなしたりするなかで、微妙な心の揺れを描こうとしたそのアイディアは、見事だ。まだ完成まではいってないと思うが、特にオチをどうするかを練っていくといい作品になる予感がする。

 なななは、「待つ女」を演じた。恋人と待ち合わせている女心を描くというどちらかといえばよくあるパターンのコントなのだが、それで笑いをとっているのは、なななの演技力だと思う。最後のオチをどうするのか、注目したのだが、実は待っていた女性は、おばあちゃんだったというオチにした。確かに意外なオチなのだが、ちょっと唐突な感じがした。これもまた練りようによってはかなりいい作品になると思う。

 常連のメンバーもそれぞれ、いいものを出していたと思う。ケッチ!の「ノミと手品師」は、ノミのアドバイスで、バナナに穴を開けて、マジックのネタにするというアイディアが良かった。

 箱から風船を次々に取り出して、ふたりで膨らませてコントを演じたDai丸百貨店は、おそろいのツナギと変なサングラスといういでたちのおかしさもうまく生かした。あたりまえの物をつかって、あたりまえではなくしてしまう、理科の実験のようなコントなのだが、この路線はふたりにあっているような気がする。

 いま一番メンバーの中で充実した演技を見せてくれるのは、重森一であろう。ダンサーとしても活躍している彼の持ち味は、重厚な身体の動き。しかしプラコメでは、語るマイムともいうべき、童話や、何故か必殺仕事人をモチーフとした語りものなど、独特のパフォーマンス、まさに重森ワールドともいうべき、ジャンルにとらわれない世界を見せてくれる。重森がなにをやるのかは、毎回の楽しみなのだが、今回はふくろうを演じてくれた。ふくろうが、ひとりでボジョレーの解禁を祝うというストーリーなのだが、ネタよりも、ふくろうを演じたというところだけで、十分に笑わせてくれた。舞台に立つとその存在感だけで、引き込まれる数少ないパフォーマーのひとりだ。

 この他ではこうじが、つくったコントを常連メンバーが演じた「ごみ箱」は、まだ習作の段階。オチをどうするかが問題だろう。

 わがしの腹話術は、まだまだ。ネタになっていない。ネタになってなくても、その不思議な存在感をどう際ださせるかで、笑いをとれていたのだが、この存在感自体も希薄になってしまった。もうちょっと頑張りが必要だろう。

 このところ今日のこのネタは凄かったなというような、とんでもない秀作がないのがちょっと寂しい気もするが、あと何カ月後かに、そんな作品に出会えるような、気もしている。

なお、『プラコメ』の情報は、ACCのホームページで常時見れます。是非一度見に来て下さい。


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