月刊デラシネ通信 > その他の記事 > クマの観覧雑記帳

クマの観覧雑記帳

『なななの季節−春』

場所 planB
日時 2001年4月4日
出演 ななな
ゲスト ダメじゃん小出
監修 山本光洋


 なななは、プラコメで数々の傑作コントをつくってきた。今回はそれを一切捨て、まったく新しいコントつくりに挑戦してきた。そしてそのために、監修に山本光洋を迎えることにした。とにかく年に四回、山本と組んで新たな作品をつくろう、そこからクラウンとして生きる自分の糧にしたいという意欲に満ちた第一ラウンドだったが、正直言って意欲の空回りで終わってしまったようだ。
 今回は、オープニングとエンディングも含めて、6本の作品を用意してきたが、いままでのななならしさというものが感じられなかった。
 「春が来た」は、眼鏡と大きなマスクで花粉症から逃れようとするコント、ちょっとオチがなかったような気がする。
 「泣く女」がもしかしたら、いままでのなななの路線かもしれない。テレビアニメの「フランダースの犬」を泣くことだけを目的に見ている女を、泣き顔の七変化で見せる。これももう一度最初ら見ようとリモコンのスイッチを入れるというオチは、まだ甘い。
 全体的に『間』がなかったような気がする。クラウニングの間というのは結構重要で、繰り返しという手法もありきたりなようで、実際は『間』という時間のズレを利用したものだ。なななのいままでの作品の基本に、繰り返していくなかで、どこかちょっと違うことを加味しながら、ズレを作っていくという『間』があったように思える。ちょっとまどろこしいようで、それが笑いを生み出す原動力になっていた。
 今回はこのまどろこしさをそぎおとし、よりシャープに作品をつくろうとしたのかもしれない。それはもしかしたら山本の要求だったかもしれない。
 その両者の志向がまだ噛み合っていない、そんな気がした。
 ただそれは、今回あえてなななが望んだことであり、挑戦であったわけで、一回目だけで判断してはならないだろう。このせめぎあいから、きっと何かが生まれてくるわけで、それがなななを大きくすることにも繋がっていくと思う。
 二回目の公演を期待したい。
 収穫はゲストのダメじゃん小出の時事ネタと皇室ネタの二本だ。
 亀井静香のコント「オフレコしずかちゃん」は秀抜だった。真ん中気味に分け、ちょっと後ろの方が立っている髪形、ちょっと目を垂らし、さらにはちょっと派手目のネクタイ、よく化けたものだ。一時期の『ニュースペーパー』を凌ぐ勢いがある。確実に小出は、新境地をひらこうとしている。


目次へ デラシネ通信 Top 前へ | 次へ