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クマの観覧雑記帳

マスクマジシャン

日時 2001年12月20日午後7時開演
会場 東京厚生年金会館
公演時間 90分 


 多少仕事で関係したマスクマジシャンのライブショー。彼はテレビが生み出した芸人であることを確認したステージとなった。

 オープニングは、上、下に備えられたスクーリンに彼が今回日本に来るまでのストーリーが簡単に紹介され、日本人のナレーショーンが入り、レザー光線やスクリーンを使った派手な登場と消失からはじまる。
 このオープニング自体が、テレビ的で、大げさな解説ではじまり、彼の神秘性が強調される。ライブのステージにここまで解説が必要なのかと思うのだが、いままでテレビでこうした演出で出演してきたのだから、しようがないのかもしれない。
 全体的にテンポがかったるい。それとまわりを彩るはずのダンサーたちの踊りがいただけない。せめて振付ぐらいは合わせてくれよなという感じがした。
 実際に演じたマジックのトリックをすぐにネタバラシをするのは、テレビと同じ。ただネタバラシをしたあと、さらに次のトリックが演じられるというのが、このライブの味噌となっている。ここはとても新鮮だと思う。ジクザグと呼ばれるマジック、空中浮遊、切断と三つのトリックをこの手法で演じている。これをもっと違うトリックであと3〜4つ見せてくれると、かなり独自性がでてきて、中身が濃くなると思うのだが・・・
 そんなにネタはないということなのだろう。
 テレビ的だなあと思わせるのは、途中ナポレオンズを登場させて、しゃべくりを交えたマジックをいくつか見せているところ。これがないと全体的に構成できなかったのかもしれないが、ちょっとかったるい感じがした。

 自分にとって一番新鮮だったのは、彼がスライドハンドと呼ばれる手や指をつかった正統派のカードやスカーフを使った小ネタを見せてくれたこと。カードがだんだん小さくなり、最後は紙吹雪になるマジックや、二匹の鵞鳥をスカーフ(長めの)から出したのに、正直驚いた。
 全体的に感じたのはすべてがこけおどしという手法から成り立っていることだ。トリックを次々に暴き出し、マジシャン仲間から命までも狙われている男、ミステリアスなマスクをかぶり、マジックのネタをバラすことの目的が、マジックの進歩につながるというこの男の設定が、下手すれば笑いをとりかねないギリギリのところで、成り立たせているところが、いかにもテレビ的だといえるのではないだろうか。
 テレビで勝負するのか、ステージで勝負するのか、もう少し明確なスタンスでやらないと、一発屋で終わってしまう、そんな気がしたのだが、それでいいのだというところもまたテレビ的なのかもしれない。
 ネタをばらして、そのあとさらに次のマジックを見せるというこのライブでもいくつか見せた線で、同じネタでもなんどもやるだけの心構えがあれば、ステージショーでも十分成り立つと思う。たぶんそんな心構えはないと思うが・・・
 よくも悪くもマスクマジャンは、テレビという媒体がつくりだしたアンチヒーローなのだろう。


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