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クマの観覧雑記帳

『フールB VOL.2』

日時  2004年8月25・26日 午後7時30分開演 公演時間 80分
出演  安田太朗・VJコミックカット・加納真実
会場  planB 


 トップバッターの安田太朗の作品タイトルは「無題」。およそ20分の公演。2日目は少し内容を変えてきた。今回彼がやりたかったのは、ナンセンスギャグのオンパレード。実際に20ぐらいのネタが、次々に連関性もなく、連発されたら、面白かったと思うが、さすがにそこまで準備はできなかった。そのために、観客は意味性を求めてしまい、ナンセンスの面白さまでにはたどりつかなったように思える。瞬発性が要求されるだけに、畳みかけるようなスピード感が、必要だったろう。ただいままで誰も挑戦していないことに今回はチャレンジしたわけで、ここを起点にこの路線を歩んでもらいたい。最後の字幕を巻いていくネタは面白かった。ああした肉体に負荷をかけるような、ネタはどんどんやったらいいと思う。

 VJコミックカットの「スーパー・マサオブラザーズ・アドバンス」は、意欲作。観客に、DVDのデスクを渡して、プレステのゲームをやってもらい、マサオブラーズの漫才に参加させ、アイノテ、ツッコミをふたつ、またはひとつの選択肢から選ばせて、漫才マスターをめざすというもの。いわゆるカンパケものではなく、選択肢によってちがってくるので、かなり複雑な作業だったはずだ。これをこのフールBでやろうという意欲を買いたいし、漫才とゲームを、観客参加でやらせるというこの仕掛けの構想も秀抜である。イランネタ、民主党ネタできて、最後に「ペー」を持ってきたわけだが、ここでもうひとりできたかな、と思う。具体的なものから、「ペー」という無機質なもので、落とすという仕掛けができたかもしれない。制作する側からすれば、これ以上つめこむと、ハードで部分の問題になってしまうのだろうが・・・

 加納真実は、3本のネタを持ってきた。一本目「Mに捧ぐ」は、中島みゆきの「怨みます」をバックに、青のジャージ姿と、異様な雰囲気だけで、マジックのコネタを見せるもの、十分に変で、加納のキャラクターが十分に出ていた。「純喫茶ソレイユ」は、エキセントリックウェイトレスの生態をビビットに描いた秀作。これは絶品。オーダーをとり、それを出す、食器を洗う、レジを打つ、店の主人に手を握られ、殴り返すという動作のひとつひとつが、笑えたし、そのつながりも見事だった。特に髪を前に垂らし、顔を見せないようにして、2回ほど髪をかきあげる動作を取り入れたのが、実に面白かった。ひとつの仮面を髪を垂らすことで、見せてくれた、実に見事だと思う。最後の「孤独な旅人」は、道を歩くという単純な動作の中に、さまざまな障害に出会うという、わりと定番の内容。障害を克服するところに、おかしさが生まれるはずなのだが、ツッコミが甘かったように思える。もっともっと掘り下げれば面白くなるはずだ。
 一本目と二本目のネタのキャラクターをうまくつかっていくことで、ひとつの作品ができあがっていくのではないかと思う。

 総体的に今回も、みんな意欲的にフールBの趣旨にそって、意欲的に挑んでくれたと思う。今回の試みを無にしないこと、それがとても大事になるはずだ。


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