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今月の提言
若宮丸漂流民研究会つくりに参加しませんか

津太夫の世界一周をHPで紹介している高橋さんからの便りに触発され民間レベルで、いままで歴史の隅に追いやられていた若宮漂流民たちを本格的に調査する会をつくりたい。


 『デラシネ通信』の中で、何度か私の生まれ故郷石巻の漂流民たちに関連する記事を発表してきた。ロシアに漂流した船員たちについては、大黒屋光太夫が知られている。『おろしあ国酔夢譚』という井上靖の小説、さらには同名の映画が制作されていることもあるだろう。光太夫たちから遅れること、およそ十年、同じようにロシアに漂流して、世界一周までして日本に戻って来た若宮丸漂流民に関しては、ほとんど知られていないといっていい。
 「魯西亜から来た日本人−漂流民善六物語」、さらには漂流民を日本に連れ帰ったレザーノフが日本滞在中に残した日記「日本滞在日記」の翻訳、と若宮丸漂流民に関して、二冊の本を出しているが、まだまだ作業は終わっていないと思っている。このテーマは、私自身のライフワークのひとつだと思っている。
 善六のその後、イルクーツクにある吉郎治の墓の行方、レザーノフが残したもう一冊の日本語辞書についてなど、まだ調べなくてはならないことが残っている。これを私ひとりの手で調べるのは、どうしても限界がある。そして何よりも、若宮丸漂流民がいたということ自体を知らない人がまだたくさんいることも、大きな壁になっている。こうした壁を乗り越えるために、サークルというか、会のようなものをつくり、仲間を増やし、そして若宮丸漂流民のことを多くの人に知ってもらうことができないかということをだいぶ前から考えていた。
 機が熟したのではないかと勝手に思っている。
 『デラシネ通信』でも紹介したように、クラスノヤールスクでのレザーノフファンドの動き、長崎での松竹さんをはじめとする日ロ協会の活動、地元の高橋さんのHPでの活動、さらには最近東北大学の田中教授が、レザーノフの辞書を翻訳出版もしている。
 ここで若宮丸に関心ある人々を募り、まずは会をたち上げ、それぞれの分野での調査活動を深め、さらに若宮丸漂流民の足跡を紹介する、いわば広報活動のようなものを展開していきたいと思っているのだ。
 漂流民研究に関しては、幅広い人が結集することがなによりも大事だと思っている。鹿児島のゴンザの会の活動は、地元の人たちを中心に、言語学、方言、歴史、それぞれ違う研究分野の人たちが集まって、大きな成果をあげている。
 いずれはゴンザの会などとも共同しながら、漂流民研究をすすめることも視野にいれながら、まずは若宮丸漂流民に関心をもつ人たちの輪をつくりたい。
 具体的にいま考えていることは、機関誌の発行である。これは、ひとつは若宮丸漂流民のさまざまな謎を整理しながら、その調査報告をする場であること、もうひとつは若宮丸のことをまったく知らない人たちに、少しでもその事実を知ってもらうこと、そのふたつを軸にしていきたい。
 この中では、漂流民研究のデーターベースのようなものもつくっていきたいと思っている。若宮丸の漂流談に関しては、さまざまな異本がある。これをリストアップしていく作業からはじめる必要があるだろう。また漂流民のうち、日本に帰国してきた寒風沢の津太夫や、室浜の太十郎、儀兵衛については、寺に残された過去帳や、墓などの存在が確認されているが、善六をはじめてとした石巻出身の乗組員については、過去帳などの調査がされていない。彼らの出自を探ることも大きな作業となるだろう。
 またロシア語の資料で、翻訳されていない文献もいくつかあるので、それを紹介することも必要であろう。
 こうした機関誌を、宮城県内の小学校や中学校に配布することができないかとも考えている。
 また機関誌という印刷物だけでなく、地元で津太夫の世界一周をHPで連載している高橋さんのHPと連携しながら、サイトをつかってリアルタイムで情報を交換するために、『デラシネ通信』の中に、会報を紹介するコーナーをあらたにつくることも考えている。 まずは手始めに、機関誌創刊準備号のようなものを何号かつくりながら、仲間をふやしていきたいと思う。
 積極的にこの会をたちあげるために参加していただける人たちに手をあげてもらいたい。一緒に調査をしていける人、広報活動でアイディアがある人(学校に配布するにはこんな手があるとか)、古文書に興味のある人、ロシア語ができる人、石巻のお寺に詳しい人、シベリアに詳しい人、インターネットに詳しい人、そんな人たちがまず集まって会の骨格をつくれればと思っている。


 参加を待っています、メール掲示板でご意見などをお寄せ下さい。


---> 2001年12月8日、石巻若宮丸漂流民の会が設立されました。


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