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週刊デラシネ通信 今週のトピックス(2001.03.09)
プラコメが店じまい

 まる三年間、毎月中野の小さなスタジオでやってきたプラコメがその幕を閉じることになった。思いがけない幕切れだった。
 マンネリを打破するために行った5Daysという連続公演が、ひとつの引き金になった。それは、公演が失敗ではなく、成功に終わっただけに、なんとも妙な気持ちになったのは事実である。
 それだけこの公演に参加していたパフォーマーの意識が、5日間の連続公演で、より高まった結果なのだと思う。
 お仕事日誌(2月26日)にも書いたことなので、成り行きについてはここで繰り返そうとは思わない。ただ誰が言い出したということでなく、参加したパフォーマー自身が、プラコメで演じることの問題意識を突き詰めた結果、店終いという道を選んだということだ。
 月に一回、営業ネタではないもの、自分たちがやりたいもの、やってみたかったことを試す場がプラコメだった。最初5組のパフォーマーたちが集まって、おっかなびっくり始めたプラコメであるが、ジャグラー、ボードビリアン、クラウン、ひとり芝居、マイム、ダンス、マジック、コントなど、ジャンルを異にするパフォーマーたちが、どんどん集まってきた。試す場と同時に、プラコメは競い合う場ともなった。パフォーマーたちが、月に一回集まり、互いの芸を批評しながら、刺激しあうことにもなった。それは次のネタをつくるうえで、大きなエネルギーとなっていった。
 実験の場だといって自己満足に陥ってはいけない、入場料を払って見に来てくれるお客さんたちに満足して帰ってもらいたい、そのためにみんなで知恵をしぼりながら、いいステージをつくろうとした、これにより寄席とは一味ちがうバラエティーショーができつつあった。
 その意味では、この3年間参加したメンバーにとっても、何度も足を運んでくれたお客さんにとっても、貴重な体験になったのではないかと思う。
 では何故、閉店という道をみんなが選んだのか。

 いつのまにか刺激しあう場が、馴れ合いの場となり、実験の場が、自分たちにつきはじめた客へ媚びることになったことに気づいたからだろう。プラコメは決して金になるところではない、だがここで金のためにやっているのではない、そんな自分に対して甘える、そして毎回みんなと顔を合わすことで安心してしまっている、いわばプラコメが、安息の場、憩いの場になったことに、危機感を覚えたからだろう。
 5日間連続公演をする際のテーマは、「発見」であった。新しい観客と出会い、演じる自分自身も挑戦することで何かを発見しようということであった。
 パフォーマー自身、この5日間で多くのことを発見したと思う。そして自分なりでこれを突きつめたいと思ったとき、いままでの月に一度のプラコメという枠が邪魔になってきた。それはとにもかくにも自分たちでほのかにやりたいことが見えてきたことに他ならない。
 これから先は、メンバーたちがこの三年間のプラコメでの活動や出会いをもとに、次なるプロジェクトを自分たちで企画し、実施していくことだろう。
 いまはそれはそれでよかったと思っている。
 私自身も、プラコメの経験を踏まえ、本格的なバラエティーショーの場をつくるために、次なるプロジェクトをたちあげようと思っている。
 そして今度は企画だけでなく、全面的に制作する立場に立ってやりたい。大体の構想は固まりつつある。今度のプロジェクトは、私にとっても試金石となるような気がしている。


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