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クマの観覧雑記帳

うな丼ライブVol.7 「上海夜鶯(シャンハイ・イエイン)」

日時 2000年6月25日(月)午後7時半
場所 横浜・野毛「一千代」
料金 5000円(うな丼、缶ビール付)


 野毛の名物店のひとり、誠ちゃんこと関口誠二氏がオーナーのうなぎ&ふぐ屋「一千代」で、不定期に行われているうな丼ライブ。いままでは浪曲、ボサノバ、ブルース、沖縄島唄、フォーク、民謡などのライブが行われているが、実際に見るのは今回が初めて。見事なくらい、観客は顔なじみばかり。
 この上海夜鶯を発見した作家の山崎洋子さんが担当する受付で、5000円を払い、缶ビール一本と、何故かJALの機内用のおつまみ、そして食券をもらい、2階に案内される。ここでビールを飲みながら、うな丼を食べる。産経新聞横浜支局のH氏のテーブルに同席した。今日のうな丼はいつもよりも味が濃いような気がした。
 さてまた下に降りて、いよいよ7時半開演。40人以上の人で店内は、異様なほどに暑い。冷房の効き目がほとんどないくらい。口の悪い客のひとりが、この店はいつも閑古鳥が泣いているから、それにあわせた冷房設備がないなどと言っていた。
 この上海夜鶯は、去年の5月に結成されたという男3人組のバンド。中国楽器を弾く中国人と、李香蘭ばりに女装したボーカル、MCとソロバンをトニー谷ばりにかきならすリーダーという編成。彼らは中国歌謡曲を専門に歌うバンドということだが、レパートリーにはタイや台湾の歌謡曲も含まれていた。真価を発揮したのは、戦前の大陸で、それこそ李香蘭や渡辺はまこらによって歌われた「支那の夜」とか「サンフランシスコのチャイナタウン」といった日本の歌謡曲。これが妙に心に滲みてくる。エキゾチックでしかもコスモポリタンの匂いがプンプンとただよってくる。戦前大陸を彷徨っていた根無し草たちの、けだるさというか、哀愁というか、切なさ、あきらめにも似た突き抜けた明るさ、そんな心情に訴えるものがあるような気がする。それは自分にとってもどこか憧れるところがある。ここちよい時を過ごせた1時間だった。野毛という街にもぴったりはまっていたような気がする。
 田辺一鶴ばりのツケ髭をつけているリーダーのしゃべりがもう少し、テンポよく、面白いものになると、さらにこのバンドの特性が出てくるかもしれない。
 こうした無国籍バンドは、ヨーロッパ並のキャバレーをめざすカバBなんかにぴったりかもしれない。


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