日時 2001年9月11日午後7時半
会場 planB
公演時間 60分
旧プラコメ(現カバB)のメンバーのなかでは、独特の芸風をもつ個性派のふたりによるライブ。重森が小出に一緒にやりたいという申し出があり、実現した公演だ。『我流』というタイトルは、プラコメの打ち上げの時に、たまたまあった日本酒の銘柄名から名付けられたもの。
構成的には、「ウィルス」、「初恋」、「別れ」というお題をもとに、ふたりがそれぞれネタをつくり演じるもので、からみは全くない。ちなみにこのお題は、私が出した。
番組は以下の内容になっている。
1) 「迷惑メール」(ウィルス) ・・・・・・・・ ダメじゃん小出
2) 「犬」 (ウィルス) ・・・・・・・・ 重森一
3) 「お見合い」 (初恋) ・・・・・・・・ ダメじゃん小出
4) 「届かぬ想い」(初恋) ・・・・・・・・ 重森一
5) 「ホームラン」(別れ) ・・・・・・・・ ダメじゃん小出
6) 「グッドラック」(別れ) ・・・・・・・・ ダメじゃん小出
7) 「よだかの星」 (別れ) ・・・・・・・・ 重森一
小出は、最近冴えをみせている時事ネタを中心にネタをつくり、重森は語りを交えた「よだかの星」以外は、ちょっと危ない、いままでにはないキャラでネタを二本つくってきた。いい公演だったと思う。プラコメやカバBでは見られない、濃い内容になっていた。客層も、三十代のサラリーマン風の人が結構多くて、いつもとはちょっと違っていた。ふたりともそれぞれの客をもちはじめているのかもしれない。
今回のネタでは、 重森の「犬」、小出の「グッドラック」がよかった。
「犬」はクラウンシゲッチに扮した重森が、バルーンで犬をつくったあと、客を舞台にあげ、突然黒のパンツとサスペンダーだけの犬に変身し、いたぶられることを快感を覚えるマゾ犬を演じるという、きわもの。こうした人間の奥底にあるかもしれない願望を、剥き出しにしたところは、たいしたものである。小出というブラックなキャラクターに引かれて、できたキャラクターかもしれない。特に変身シーンはぞくぞくとするような迫力があった。この路線は、いままでになかったものであり、重森の新しい一面が見れたような気がする。キューピット(それもキャパクラのお姉ちゃんのような格好で出てくる)を演じた「届かぬ想い」はまだネタになっていなかったし、「よだかの星」もいつもよりはずいぶんテンションがおちていたように思える。
小出の「グットラック」は、ミッキーマウスの縫いぐるみを机に置き、女装した小出が別れを告げるという内容なのだが、少したつとこのミッキーが実はアメリカのことだとわかる。一人勝ちしているアメリカへのグチ、不満をさんざん言いながら、最後に中指を立てて、グットラックと言い捨てる。アメリカに対する心情的な不満をうまく代弁していたと思う。これに共感した人たちはたくさんいたと思う、実際アンケートでもこのネタが良かったという人がかなりいた。
この公演のあと、家に帰ったらアメリカのテロ事件を伝えるニュースを見て、びっくりしてしまった。
小出の黒い笑いはますます磨きがかかってきたと思う。ただ時事ネタが、マンネリ化する危険性があることは事実。いままでは時事ネタをやっているだけで、新鮮さがあったのだが、テレビのワイドショー的な一面的、表面的とらえかただけでは、新鮮味がない、笑いへつなぐまではいかないということだ。「迷惑メール」でやっていた外務省ネタ、教科書問題ネタは、事件をなぞっているだけだった。いままではそれでも笑いはとれたところだし、今回でもそこそこ笑いをとっていたが、もっとえぐって欲しいと思ったお客さんは結構いると思う。事件をなぞるだけではなく、自分なりのスタンスをとること、これがこれからのポイントになるだろう。
小出も重森も、いままでにない笑い、パフォーマンスをつくりだそうとしている。それだけ型にはまらないものを求めている。その過程の公演だったといえる。ジャンルにとらわれず、いろいろ試行錯誤するなかで、独自の芸風をつくる可能性をもっているふたり、いま必要なのは、どんどんライブのステージをやることだろう。
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