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クマの観覧雑記帳

ダメじゃん小出VSふくろこうじ バトルライブ
『泥仕合』

日時 2001年12月13日午後7時30分開演
会場 planB
公演時間 55分  


 楽しみにしていたふたりのライブ。バトルというよりは、息の合ったなかなか中身の濃いライブを見せてもらった。逆にあまりにも無難にまとまりすぎていたというか、すかされたような感じもした。

 まず最初に今回のプログラムを書きとめておく。

1. 「プロローグ」(ふくろこうじ・ダメじゃん小出)
2.「おかあさんといっしょ」(ダメじゃん小出)
3.「ダンス入門」(ふくろこうじ)
4.「天皇・明仁」(ダメじゃん小出)
5.「発掘」(ふくろこうじ・ダメじゃん小出)
6.「モダンアート」(ふくろこうじ)
7.「ライダーマン」(ダメじゃん小出)
8.「長いお別れ」(ふくろこうじ)
9.「わかば学園」(ふくろこうじ・ダメじゃん小出)
10.「Happy X’mas」(ふくろこうじ・ダメじゃん小出)

 「おかあさんといっしょ」は幼児番組をつかって、サッチーを揶揄したネタ。軽くジャブをかまそうかというところだろう。
 「ダンス入門」は、通販で買ったダンス入門のプリントを見ながら、ダンスを練習するという内容なのだが、みかん箱ぐらいのダンボールに、プチプチで大げさに包装されたプリントが一枚だけというところで笑わせておいて、ステップやエルボードロップでこのプチプチつぶしするというのがオチ。おもしろいアイディアだと思う。
 「天皇・明仁」は、小出の得意な皇室ネタ、いままで田植えと餅つきを見たが、今回は来春の園遊会の余興で腹話術を演じるという仕掛け。「園遊会の余興」という下りには大笑いしてしまった。この腹話術に使うのがミッキーマウスの縫いぐるみで、ふたりのコンビが「アンポーズ」というので、この進行に期待したのだが、内容的にはイマイチだった。この皇室ネタは、天皇という聖性と皇居という神秘的な場がうまく生かされているので、これを大事にしていくべきだろう。ちょっと俗ぽっくなったような気がした。
 「発掘」は、ゴットハンドの藤村の息子とその先生の掛け合いなのだが、ぜんぜんひねりも突っ込みもない凡作。
 「モダンアート」は、こうじの得意なオブジェをつかったコント。さすがである。カズーを口先につけた折り曲げを自由にできる管の先に、スッポンをつけた奇妙な物体を最初はアート作品に見立て、いろいろ動かしていき、カズーをつかって音を出すという力作。ただこのアブストラクトなオブジェを楽器として使うのなら、カズーをつかわず、もっとオブジェ自体がだす音を演奏するというところまでもっていくべきだったと思う。カズーで音を出すというところに妥協があったのではないか。ただアイディアは見事だった。
 「ライダーマン」はリストラにあった、はげヅラの仮面ライダーという設定が面白かった。小出は漫画のキャラをうまく使うが、リストラと結びつけたところが秀抜だった。
 「長いお別れ」は、こうじの義手の長い手をつかった『辻君』のバリエーション。バックで使われた音楽が良かった。選曲については彼は、本当にセンスがある。しかしこの辻君、あるいは球の立体をつかったコント、今回の「モダンアート」、アイディアは抜群だと思うが、このアイディアが浮かんで、モノをつくった時点で、作業が終わっているような気がする。これがこうじの弱点なのだとおもう。もっともっと展開できるし、練ればかなりのものができるはずだ。ネタがわき出てくるのだろうが、オブジェネタをひとつひとつ練る作業も必要なのではないかなあ。
 「わかば学園」は、今回の一番の問題作だった。こうじが扮する身障者(抜群にうまい)とそれを世話する男のやりとりを描く。「24時間テレビ」で身障者を見て感動してボランティアを志願したという小出のイジメ、それを明るく受け入れる学君とのやりとりは、身障者を食い物にしているある意味での闇を告発しているわけで、このアングルはいいと思う。ただ身障者を演じるという点に、異論はいろいろ出てくるだろう。身障者をとりまく環境を考えると、こういうネタを演じるのはかなりの冒険であることは間違いない。そこまで踏み込んだのは、問題提起として評価すべきだろう。
 フセインとビンラディンが、マルボロとコークでクリスマスを祝うという最後のネタは、これも見事な着眼、笑ってしまいました。

 こう書いていくと、どれもこれもアイディア、視点はかなり良かったのだと思う。ただどこか一歩手前で逃げられて、もっと面白くなるのにという不満が残ったのは確かだ。
 小出はまだまだ試行錯誤を続けることになるとは思うが、そのために来年の隔月のソロライブをやるわけなのだろうが、着眼点はいいのだから、あとはアングルだと思う。皇室ネタのような天上人のようなアングル、今回の身障者のような下からのアングル、それを絡ませながら、何かをえぐりとってもらう、そんな作品が生れるのを期待している。


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