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クマの観覧雑記帳

「カバレット・シャーレ&オールナイトライブ」

カバレット・シャーレ
オールナイトライブ


カバレット・シャーレ

公演日 1月30日午後7時半から9時15分
会場   横浜にぎわい座のげシャーレ
出演  ジョニー宜野湾,ダメじゃん小出,ふくろこうじ,チャイソンズ,ステラミラ 


 飲兵衛ラリー協賛イベントということで急遽決まったこの公演、ほとんど打ち合わせらしきものもできず、ぶっつけ本番のようなかたちでした公演だったが、カバレットらしい雰囲気がでた公演になった。今回は沖縄のブルース歌手ジョニーさんがゲスト、それにチャイソンズとステラミラと音楽ものがメインの公演になった。音楽ものについては、ジャンルがちがうものが、うまくならんでくれたことで、ヴァラエティーさがよくでたと思う。
 今回の公演の大きな収穫は、チャイソンズだった。ダメじゃんもこうじも、チャイソンズとセッションすることで、ずいぶん幅がひろがったのではないかと思う。安西君の二胡の伴奏で、ダメじゃんがディアボロをしながら、中国語なまりでふたりかけあいをしたり、安西君と河野君の伴奏で、こうじが即興でマイムを演じたりと、チャイソンズのもっている潜在能力とうまくパフォーマーがマッチしたのではないかと思う。
 ダメじゃんも、肩の力が抜けて、いい本領を発揮していたと思う。最後の東急線をネタにした電車オタクギャグは秀抜だった。「MM21がなんだ、こっちはNN21だ、ノーフィーチャー野毛!」というのには笑わせられたし、桜木町駅の再開発に触れて、川崎のホームレス施設をもってきて、黄金町のガード下の風俗店を全部もってきて、ランドマークを横にしたような感じで、つかえばいいのではないかという話には、うんうんと思わずうなづいてしまう、妙な説得力があっておかしかった。ソロライブとはまたちがういい味がでていたように思える。
 こうじが、ずっと演じ続けている段ボールものは、ずいぶんと完成度が高くなった。食い入るように見てしまった。もしかしらふんころがしのような丸い球体ものよりも、この段ボールもののほうが、早く完成するような気がする。丸い球体に入っての動きにはいろいろ制約がでてくるが、段ボールの方が身体の動きの見せかたをうまく見せることができるのかもしれない。ぐっと進歩した気がする。フール祭の公演が楽しみだ。
 こうしたわりと少人数で、このくらいのホールでのカバレット形式の公演を定期的にやっていくのもひとつの方法なのかもしれない。

オールナイトライブ

公演日 1月31日午前1時から2時半まで
会場  ライブハウス『ドルフィー』
出演  元気いいぞう,チャイソンズ,ステラミラ


 野毛オールナイトライブは、1時少し前から、野毛の老舗のライブハウス『ドルフィー』で始まった。ダメじゃんは翌日栃木で営業があるということで、桜木町発最終電車(?)で帰り、その代わりに中野での定例歌会を終えた元気いいぞうが参加してくれた。元気いいぞう、チャイソンズ、ステラミラという順番で、たぶん2時すぎまでやっていたと思う。と思うというのは、自分が相当酔っぱらっていたということなのだが・・・
 トップバッターの元気は、まさに元気、久し振りにキレのある歌を聞かせてくれた。どれだけ笑い転げたことか!この時はほぼ満員だったドルフィーのお客さんのほとんどは元気のことは知らなかったと思う。それを最初の曲から見事に引き込み、場内を笑いの渦にしていったのは見事だった。こういうライブハウスでの公演が、もしかしたら元気の本領を発揮できるのかもしれない。発想の転換というか飛躍の見事さが、客の心をきっちりとつかんでいた。
 チャイソンズは、きっと元気のあとはやりずらかったと思う。しかし堂々と暗い歌を中心にしたレパートリーで迫ったのはえらかった。それにしても斎藤君の歌は、情感があっていい。上海夜鶯の時のように女装もいいけど、タキシード姿の歌もさまになっている。
 そろそろ深夜になり、ほどよいくらいのお客さんになったところで登場したステラミラが、注目を浴びた。シャーレの時は、ドレッシーなドレス姿で歌っていた武井純子が、やはりこうしたライブハウスの方が歌いやすいのだろうか、ふつうの格好で実にのびのびと歌っていた。出足からすごくいいノリで、お客さんの心をつかんだ。適当にもう酔っぱらっているお客さんから、「可愛いぞ!」なんて掛け声もかかったり、とてもいい雰囲気で歌っていた。ドルフィーのマスターが思わず身を乗り出して、よく声が出ているねえと絶賛していた。
 こうしたライブハウスでの公演もまた、カバレットの可能性を教えてくれたような気がする。本来はこうした雰囲気のなかでやるのが、カバレットなのかもしれない。
 ドルフィーというところは空間的にも、いい感じのところだし、こういうところで定期的にカバレット形式のものをやるのもいいかもしれない。

 野毛の町は、飲兵衛ラリーが目的で繰り出した人たちと、桜木町駅がなくなることでやけ酒飲む人たちで、夜遅くまでにぎわっていたが、シャーレとドルフィーは、カバレットの次なる展開への大いなる可能性を育みながら、静かに燃えていた、そんな風に思う。
 なにかが見えた公演だった。


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