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クマの観覧雑記帳

ダメじゃん小出「負け犬の遠吠え」Vol.10

観覧日 4月20日19時半開演
会場  内幸町ホール
公演時間 70分
出演・演出 ダメじゃん小出 


 内幸町ホールで初めてのライブの前回と比べて、かなり固さがとれたというか、伸び伸び演じていたような気がする。いい出来だった。前回は全般的にダークトーンだったが、今回は小出の持ち前の畳みかけるようなテンポの良さが全面に出て、カラっとした仕上がりになった。

 「スパイダー」 しばらく封印していた右翼街宣もので、開演前の注意を影アナで。場内は早くもクスクスと笑い。早々と客席を温めてくれる。そしてクモに扮し、落語でいう枕の部分で、人質解放というホヤホヤのネタで、ぼやく。うまい掴みだった。ここでかなり笑いがきたことでずいぶんと楽になったと思う。教科書問題を材料にしたクモ自体のネタはさほど面白さはなかった。
 「ジャパネット・ダメダ」 通販の高田社長をもじったこのネタは、本来の小出らしい、テンポよくまくしたてるような軽やかさが生きていた。データー漏洩事件にひっかけたCDをまとめて3つというのはおかしかった。シガーボックスを使って、小泉の構造改革をこけにしたのは見事。今回の作品のなかでは一番笑えた。
 「ご近所の底力」は、VJの映像との絡みがよく生かされていた。靖国神社で撮影したNGシーンのもじりには笑わされた。ただ中国と韓国をもじったキャラクターの語尾に「コロ」をつかっていたのはいただけない。「チャンコロ」という言葉がどうしても連想されてしまう。
 「年金」 いつもやっている「ニュースと天気予報」のニュース部分をナレーションで流し、社会保険が崩壊して、民営化されたというアタマのシーンはうまい。老人ホームにいる老人たちが年金手帳を取り返すというこのネタの着眼点がすばらしい。もう少し突っ込むととてもいいネタになっていくような気がする。まさに負け犬の遠吠えで、いままで世間から相手にされないような人たちが、むちゃくちゃのことをする、そこの逆転の発想は、もっとポジティブにすると、また新しい作品つくりにつながっていくような気がする。
 「海よ、さらば」は、BSEや鶏インフルエンザで食肉産業の苦境を、捕鯨禁止で増え続ける鯨たちが、丘にあがって、食材になろうと決起するという、小出のこれも得意の寓話ものをちょっと芝居風に仕上げたものである。切り口は文句ないし、目のつけどころも的を得ている。ただ芝居の部分がやはりこなれていない。努力はわかるのだが、やはり工夫が必要かな。

 あえて定番のニュースと天気予報を捨て、映像にもあまりおんぶせず、新機軸を打ち出したところは、負けん気の強い小出らしい。そこは買いたい。
 つなぎの携帯もののショートコントも、よかったと思う。
 内幸町ホールの板に少しずつなじんできたかな。いい公演だった。


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