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カバレットシネマ in かもめ座 サーカス・芸

カバレットシリーズ第6弾! 飲兵衛ラリー協賛企画
カバレットシネマ in かもめ座

日ノ出町・かもめ座s
公演を終えて

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日時: 2005年4月21日(木)午後7時半開演(7時開場))
会場: かもめ座(横浜市中区宮川町2-36)
京浜急行・日ノ出町下車
レストラン「バーミヤン」先路地を右に曲がったところにある映画館光音座隣
入場料: 前売り 2500円 (当日 2800円) 全席自由席
ワンドリンク(缶ビールかソフトドリンク)付
 
 昨年1月の桜木町駅閉鎖記念飲兵衛ラリーに協賛、横浜にぎわい座小ホールシャーレで公演、飲兵衛たちからも絶賛されたあのカバレットが、また野毛に帰って来ます。しかも今回は、二年前に惜しまれながら、閉館したあの映画館「かもめ座」での公演です。
 かもめ座は、京急日ノ出町駅から歩いて3分あまり、大岡川沿いに建つ、湊町ヨコハマの雰囲気を漂わせる、古い映画小屋。このレトロな雰囲気のなかで、ちょっと懐かしい歌あり、映像あり、啖呵芸あり、さらには詩吟などの和物芸、ダンス、お笑いに、ちょっとお色気もまじえての90分のショー。
 今回のテーマは、飲兵衛ラリーにふさわしく、「ほろ酔い気分」。酔っぱらいを演じさせたらこの男の右に出るものなし、三雲いおりが進行役をつとめるほか、野毛の流し芸でもおなじみのアコーディオン芸人安西はぢめの生演奏、2年ぶりに「かもめ座」のスクリーンに甦るVJコミックカットの爆笑映像、さらには、ふくろこうじとと村田朋未による、ストリップ(?)、美人パフォーマー、リリーによる本格的詩吟、大阪から特別参加する石原耕のバナナの叩き売りなど、いままでにない濃密でレトロなカバレット空間を、楽しんでいただきます。
 飲兵衛ラリーのスタートは、かもめ座から!
 
出演:
(予定)
三雲いおり(ヴォードビリアン)
石原耕(バナナの叩き売り)
ふくろこうじ(クラウン)
村田朋未(パントマイム)
安西はぢめ(アコーディオン芸人)
VJコミックカット(映像)
リリー・セバスチャン・マッケンロー(詩吟パフォーマー)
他、特別ゲスト飛び入り出演も!
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◎予約・申し込み ACC 電話:03-3403-0561
IZJ00257@nifty.com
野毛飲兵衛ラリーについては、野毛飲兵衛ラリー公式ホームページ


カバレット制作ノート
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カバレットシネマinかもめ座を終えて

 いままでクラブチッタ、横浜にぎわい座シャーレ、東京キネマ倶楽部といろいろなところでカバレットをしてきたが、今回の公演が一番良かったような気がしている。ひとつにはやはり小屋の雰囲気が、カバレットにぴったりだったことがある。
 実はこの公演、やろうかやるまいかずいぶん悩んでいた。野毛の飲兵衛ラリーにあわせてなにかイベントやろう、光音座でカバレットなんかいいんじゃないと、飲んだ勢いで話したことをすっかり忘れていた。そのうちにサーカスシルクールの公演を直前の4月12日にすることが決まって、これは無理だと逃げモードに入ったとき、タイミングよく光音座は、使えないという連絡がきた。よしこれで逃げられると思ったのだが、その代案として、となりの閉館していたかもめ座はどうかという話が出てきた。ごくたまに貸しているらしいというのだ。そこで野毛の人に間に入ってもらい、かもめ座のオーナーに話をしてもらった。「舞台なんか、奥行き80センチしかないし、椅子も壊れているから無理だ」と言うことだった。中がどうなっているのか興味もあったので、下見だけでもさせてくださいと、直接オーナーに掛け合うことになった。やはり電話では無理の一点張りだった。ただし下見は「いいよ」ということになった。この時点で自分の気持ちのなかでは、この話は九分九厘流れると思っていたし、ある意味ホッとしていた。
 下見に出かけたのは3月21日、つまり公演の一ヶ月前のことである。オーナーのAさんは、早々と玄関を開け、私を待ち構えていた。ドアを開け、中に入ると、ひんやりとした空気が澱んでいた。客席が壊れていると言っていたから心配だったのだが、立派なもの、十分使えるし、二年前閉鎖していると聞いていたから、荒れ果てた感じを予想していたのだが、全然そんなことはない。50年前に出来たというが、そのレトロな雰囲気がそのまま残っているのがなによりもいい。こうなったらどうしてもここでやりたくなってきた。Aさんに80センチの奥行きの舞台でも十分できるし、興業というよりは遊び感覚でやるもので、ぜひ使わしてくださいと頼み込んだ。「椅子はどうするんだ」と言うから、ねじが緩んだところは自分たちで締めますからと、答えた。最後はAさんも根が尽きたのか、「わかった、使っていいよ」ということになった。99パーセント断られるものだと思っていたし、自分もその方が良かったはずだったのだが、この小屋に入って、まったく逆の展開になってしまった。いま思うとこれが、小屋の持つ霊力ではなかったのか。
 とにかくサークルの公演が終わるまでは制作的なことはなにもできない、まずは出演者を決めないと、ということで三雲君に相談してみた。飲兵衛ラリーのイベントだし、彼の酔っぱらいキャラをここで存分にやってもらいたかった。そして映画館なのだから、やはりVJコミックカット、そしてこのレトロな空間を音で色付けるには安西君、この3組がまず頭に浮かんだ。3人ともスケジュールも大丈夫だし、面白そうと乗ってきてくれた。東京キネマ倶楽部に出演してもらったヨロ昆撫や元気いいぞうにも声をかけたのだが生憎スケジュールの調整がつかないという。とりあえずはこの3組で、たまたまフールBのネタみせがあった時に、打合せすることになった。ここに同席していたのがふくろこうじ、いろいろと話をしているうちにこうじ君も出演することになった。それに、三雲君が舌耕芸人石原耕君に京都から出てもらえるよう了解をとっていた。VJの知り合いのエレクトリック詩吟のリリ−さんもPAの設備がなくても、詩吟をやりたいと言ってくれた。これで出演メンバーが決まった。構成をいろいろ話合っているうちに、三雲君が、「トリをどうしましょうかねえ、この雰囲気だと、やっぱりストリップかな」と言い出した。そこでみんなの頭にひらめいたのが、村田朋未さん。すぐにその場で電話をしたら、やりたいという。ストリップについてはこうじ君にアイディアがあるようだった。
 この打合せがあったのが、3月28日。次に実際にメンバーが集まったのが、シルクールの公演が終わった4月15日のかもめ座。自分以外はみんな初めてだったのだが、すっかりこの場の雰囲気にはまったようだった。この日はAさんの立ち会いで、みんなでスパナを持ち込み、椅子の緩んだネジを締めることになった。このあと構成について再度打合せをしたのだが、だいたいの流れは、三雲君が考えてきてくれていた。この流れのなかで、絡むところを中心に場当たり的にやったのが、公演の前日である。
 いま思うと無茶苦茶なことをやったと思うのだが、逆にこのぶっつけ本番のような気楽さが、良かったのかもしれない。
 そして当日、私はここでめったにない体験をすることになった。
 みんなが集合したのは午後1時、それぞれの準備をしながら、手伝いに来てくれたサロクのメンバー2人と、VJの手伝いの1人が、まずは椅子を拭きはじめた。それから床拭きや掃除にかかる。Aさんが自らモップの水の絞り方を若者たちに伝授していく。そのうちにいままで場内に澱んでいた空気が変化していく、時間を追うごとに小屋が生き生きとしてくる、そんな感じがしてきたのだ。これは公演後みんなで話したのだが、私だけではなく、みんなが感じたことだった。いままで眠っていた小屋の霊力が、目を覚ました、そんな感じがしてきた。これには正直驚いた。みるみるうちに、小屋が力を取り戻していくのを目のあたりにしたわけだ。
 ゲネらしきものもやったが、軽く流すという感じで、17時すぎにはみんなで弁当を食べていた。前回の鴬谷のあのピリピリした時間の流れではなく、どこかゆったりとした時間の流れが、心地よかった。合間合間にAさんの昔話を聞かせてもらった。この話を、小屋の霊力は聞いていたのだと思う。私たちが1週間前にねじ締めしていた時とは、まったくちがう小屋に生まれ変わっていたのである。そして開場の時間、Aさんはここでおもむろに表の入り口の明かりのスイッチを入れた。これでかもめ座は、閉館する前の姿に戻った。入場券は、昔の映画の切符を使った。
 公演中はずっと受付にいたのだが、何人も通りすがりの人が寄ってきて「何やっているの」と聞いてきた。Aさんは「こうやってみんな寄ってくるから、玄関の明かりはつけたくないんだよなあ」と言っていたが、まんざらではない顔つきだった。小屋の霊力が呼び起こされたことを、一番感じ、懐かしく思っていたのはきっとAさんだったと思う。
 この日集まったお客さんは、40人あまり。寂しいっていえば寂しい集客かもしれないが、なにかこの小屋にそれも合っているような気がした。50年前のレトロな空間で、ゆっくりとカバレットを鑑賞してもらったと思う。このゆったり感覚、そして懐かしさ、これが今回のカバレットの最大の見どころであった。ひとりひとりの出演者も、じっくりと客の反応を楽しみながら演じていた。この観客と出演者の呼吸もよく合っていたのも良かった。
 ほとんどPAもなく、照明も客電つけっぱなしの状態、あるがままの映画館でのアンプラグドな味わいが、さらに懐かしさを引き寄せた。
 いろいろなところでこれからもカバレットの実験は続けていくとは思うが、このかもめ座をひとつの本拠地にしたいという想いを強くしている。ここで2ヶ月に一回ぐらい、カバレットを続けたいと思う。
 翌日また野毛で飲んだ私は、帰り道かもめ座の前を通った。暗がりのなかで、また静かな佇まいのなか、かもめ座は眠りについていた。前日目を覚ました小屋の霊は、また静かに眠っているのだろう。暗闇のなかにぽっかり浮ぶかもめ座、私には、また呼び起こされることを待っているように見えた。


ご覧になった方の感想

ネット上の感想

まりしろ(木村万理さん) かもめ座「笑いのグランド/カバレットシネマinかもめ座」

メールでいただいた感想

匿名

こんにちは。先日「カバレットシネマinかもめ座」拝見致しました。
肩肘張った感のあった前回と比べ、今回はとにかく何もかもが楽しく、遠くから駆けつけた甲斐がありました。
会場に入る前、周辺をうろついて、懐かしくも怪しげな雰囲気に少し驚きました。
その街にとけ込むかもめ座、とてもよい所でした。お手洗いにまで探検に行きましたが、ひもを引っ張って流すなんてドリフでしか見たことなかったです。
そんな心地よい場所で大好きな芸を観る。至福の時でした。
安西さんのアコーディオンは歌うようで笑顔になりましたし、あまり触れることのなかった詩吟も聴き入ってしまいました。念願のバナナの叩き売りも観られたし。
びっくりしたのがVJコミックカットさんで、他でちょくちょく観てはいたのですが、今回はすごかった。面白かったし、映像でパフォーマンスするという事にかなり衝撃受けました。
カバシネを観に来た最大の目的、ふくろこうじさんと村田朋未さんのストリップは…笑っとけ!笑っとかないとこっちまで…という感じでした。というか完全に飲み込まれてました。芸人の域越えてるよ、でもいいかカバレットだし、かもめ座だし…
と訳の分からない言い訳を考えながら観てしまいました。
思ったよりディープでした。もっとコミカルなのを想像していたので。エロくてエグくて目がそらせませんでした。
ふくろこうじさんの演技がとても良かったです。あの表情がたまりません。実はふくろこうじさんもなかなかのヨッパライを演じる方なので、三雲さんと絡んでみても欲しかった。くどいですか?
三雲さん、あれだけ人を惹きつけるヨッパライはいないですよ。笑いすぎて館内寒かったのにいつの間にか暑くなってました。
一人一人の味がものすごく濃くでているショーで、たった何十人かで観るなんてとても贅沢でした。場が持つ空気と人の出す力がぴったりあっているのを感じ、何より演者のみなさんが楽しんでおられたようで、私も嬉しくなりました。
またあの場所で、カバレット観たいです。
今回悔やまれるのは、私がお酒を飲めない事と、飲兵衛ラリーのポスターを本気でみなとみらい反対派のものだと思って全く読んでこなかった事です。
今回アンケートがなかったので、どうしても感想を言いたくてメールを送らせて頂きました。長文乱文しかも駄文、失礼致ししました。
また楽しい企画がありましたら伺わせていただきます。今回はありがとうございました。

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