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カバレット・キネマの見どころ

プレス資料より

カバレットとは

 ドイツ語で「芸術キャバレー」の意。諷刺と機知とパロディが自在に編まれる「身体寄席」とでも呼べる世界。ワイマール文化華やかしころ、ベルリンを中心に、都市で発達したカバレット文化は、大人のくつろぎの場として、またアーティストにとっては、新たな表現の場として、発達していきます。カバレットがドイツだけでなく、ヨーロッパの観客にいまでも受け入れられているのは、そこに音楽、踊り、曲芸、マジック、コント、話芸など、さまざまなジャンルのエキスがシャッフルするなかで、新たな芸能の活力が生まれていく場だからでしょう。

カバレットシアターを日本で!

 日本でもこうしたカバレットの世界をつくろうと、1998年大道芸やパントマイムで活躍するパフォーマーを中心に、カバレットシアターは、中野のplanBを拠点にスタートします。「planBコメディナイト」、「カバレットB」と名前を変えながら、ここでの新たな出会いから、独自な芸が生まれていきました。カバレットは、時には地下室の実験スタジオから地上へも顔を出し、「野毛大道芸」、「アートキャンプ白州」、「ワールドカップ静岡大道芸」にも乱入、注目を浴びることになります。
 2003年6月からは、ミュージシャンとのコラボレーションを主体とした「カバレットチッタ」を川崎のライブハウス「クラブチッタ」で展開、ライブハウス風のカバレットシアターは、いままでにないテンコ盛り、なんでもありの新しいエンターテイメントとして、来場した観客から熱狂的に迎え入れられました。

カバレットチッタからカバレットキネマへ

 この後もカバレットシアターは、大阪の梅田HEPホール、横浜にぎわい座小ホール・シャーレ、早稲田のスタジオなど、場所を転々とし、カメレオンのように変身しながら、実験をかさね、より濃密なエンターテイメントをつくってきました。そして今回かつてグランドキャバレーだった鴬谷の「東京キネマ倶楽部」という、カバレットにはまさにおあつらえ向けの空間と出会い、鴬谷の元キャバレーというこの場にふさわしいエンターテイメントをつくることになったのです。
 谷中墓地、上野公園をうしろにひかえ、駅前にラブホテルが乱立する、レトロでキッチュな街――鴬谷で、カバレットはまた新たな道を歩むことになります。

今回のテーマは、昭和レトロ

 今回のカバレットキネマの見どころは、小屋の雰囲気をそのままに、昭和レトロの世界を再現することです。大阪万博の時代を背景にした、アニメ映画クレヨンしんちゃんの「大人帝国の逆襲」が、大人たちから絶賛されたことはまだ記憶に新しいですが、今年はコミック誌で人気の「夕陽ケ丘三丁目」が実写で映画化されたり、雑誌で次々に昭和モダンの特集が組まれたりと、日本が元気だった昭和30年代が、俄然注目されています。団塊の世代にとって、懐かしく思い出されるのは、やはりこの時代なのでしょう。
 VJコミックカットの斬新な編集による懐かしの映像を背景に、この時代をまったく知らない若い世代のアーティストたちが、そんな古くない時代、それでもどこか懐かしいノスタルジーの世界へ案内します。彼らもまたこの過去への旅のなかで、新たの芸の活力を得たようです。

東京キネマ倶楽部

 江戸の文化を今に残す町並み・鶯谷 大正ロマンをモチーフに手がけた「グランドキャバレー ワールド」。昭和40年代以来その内装はほぼ当時のまま保存されており、『ゴージャス』+『粋』+『陰陽』は平成の今も健在です。歌・ダンス・ショー等の娯楽は昭和の時代に連日盛大に行われていました。平成の今「東京キネマ倶楽部」と名を変え、昭和レトロを愛するアーティスト達やこのユニークな空間性に魅了されたオーガナイザー達にコンサート会場や演劇・舞台として広く活用されています。

大熊ワタルバンド

 ジャズからクレズマー、ヂンタに、さらにはちんどんと、変拍子のリズムに乗って、幅広いジャンルを横断、世界を股にかける「シカラムータ」のリーダー大熊ワタルが、前回の「カバレットチッタ」に引き続き、音楽監督をつとめます。今回は、カバレットにふさわしいメンバーを選りすぐった特別ユニットを編成、さらには当日には海外のミュージャンも隠し玉として用意しているという噂もあるなど、パフォーマーとのセッションにもさらに熱が入っています。添田唖蝉坊を敬愛するという大熊ワタルの本領が、このカバレットキネマで遺憾なく発揮されるはずです。

30年ぶりのステージ――藤山新太郎の「蝶のたわむれ」

 今回トリをつとめる藤山新太郎は、いまから30年前、キャバレーが日本で大人気だった頃、若手マジシャンとして、かつての「グランドキャバレー ワールド」のステージに何度も立っていました。芸術祭大賞を3回受賞するなど、いまや日本を代表する和妻の大御所が、懐かしの舞台に立つだけでなく、いつものお囃子ではなく、大熊ワタルバンドとのコラボレーションで演じられるというのも、今回の大きなみもののひとつといえます。新しいものと古いもの、古典と前衛がクロスする、平成の日本式カバレットを象徴する名シーンが、ここから生まれるのです。


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