月刊デラシネ通信 > サーカス&パフォーマンス > パフォーマンス > 第5回東京国際フール祭「どの回を見るか!?」レビュー 第2回
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6月10日(水) | 19:30開演 | 『1+1』(ワンプラスワン) | 山本光洋(日本) + コ・ジェギョン(Ko Jae-Kyung・韓国) |
6月11日(木) | 19:30開演 |
5月28日(木)〜6月7日(日)に公演されるタカイズミプロジェクトVol.2『SECOND LESSON〜カエルの王子が導く超個人的恋愛作法〜』に出演するため連日稽古に余念がない山本光洋さんに、無理を言って会社まできてもらい、今回のフール祭で公演する韓国のパントマイマー、コ・ジェギョンさんとの共作『1+1』について、これが生まれた背景、作品はどのように創られたのか、苦労したことなどをお聞きしました。(取材・文 大島幹雄)
――この作品ができたのはいつだったのですか?
去年(2008年)1月に上演されました。
――どんなきっかけから生まれたのですか?
3年前にソウルでフィジカルパフォーマンスのフェスティバルがあり、自分もそれに参加したのですが、これを主催した団体から、コ・ジェギョンさんと一緒に共同で作品をつくらないかという提案を受けたのがきっかけです。
コ・ジェギョンさんのことは知っていました。韓国のパントマイムでは重鎮です。
それで一昨年の夏8月に僕がソウルに行って、3日間一緒に稽古しました。どんなことをやるのか、大枠ができればいいかなと思っていました。これをプロデュースした人たちは、テーマは旅にしようといったんですけどね。どこかに行くっていうとマイムだとなんでもできちゃうんですよね。それだけじゃつまらないかな、何かを使いたいなあということで、この時はふたりでダンボールを使って船と車をつくって終わっちゃいました。ただここで旅に出たいのだけど、旅には出られないという状況をつくろうということは確認できました。
――それで次の段階は?
もう本番前だけですよ。2008年1月にソウルに行って、2週間ほど稽古して本番でした。ただまたふたりで一から創るというのは無理だという気がしたので、2007年8月の稽古を終えて日本に帰ってきて、こういうものにしたいというものをつくっていました。
それを12月のかかし(2007年11月30日・12月1日『かかしになるために(3) 第一回』で公演 http://www.koyoworld.com/)でふくろこうじ君を相手にやってみました。それで最初に彼に会って、見せて、この線で行こうということになったのです。
――コ・ジュギョンさんは、韓国では実力者?
20年もマイムをやって、彼は公演だけで食べているっていいましたから、実力者といっていいんじゃないですか。日本にも長野の方でマイムフェスティバルやっていた時に3回ぐらい来日したと言っていました。
――で稽古は大変でしたか?
まず通訳さんの問題ですよね、彼はまったく韓国語しかできないわけだし、こっちも日本語だけでしょ。8月の時もそうでしたが、主催者側で用意してくれた通訳さん、日本語はできるんですよ、それに綺麗でしたよ。でもこっちのやることに関心がないみたいなんですよね。僕たちが一生懸命話している時、通訳してくれないと困るのに、携帯でメール送っているんですよ、びっくりしました。やはり僕たちはものを創っているわけで、コトバがわかるだけじゃなく、やはり演劇のこととか舞台のことを少しでもわかる人が通訳してくれないと辛いですね。2週間しか時間がないわけですし。
そんな時にコ・ジェギョンの10年来の友人で、韓国でパフォーマーとしても活躍している奥田さん(以前「バブルアップ」というデュオ・グループで藤原秀敏さんとコンビを組み、現在は韓国でしゃぼん玉パフォマーとして活躍している奥田雅史さん)が来てくれたんです。助かりましたよ。
――今回も一緒に来てくれますよね。
そうなんです、助かりますよ。
――じゃ、これでうまくいったわけですね?
それが違うんですよ、創るという意味ではやっと環境はできたのですが、主催者との問題がいろいろあってですね、例えば会場が突然変わったりとかですね、いろいろ条件が変わってきたりするわけですよ。僕は言葉がわからないじゃないですか、ただコ・ジュギョンと主催者のやりとりを見ているとなんかわかるわけですよ。ヤバそうなのが・・・。
ある日コ・ジュギョンがすっかり涙目になって、「アイム オーケー ユー アー オーケー」って言って、自分の胸を叩くんですよね、信用しろということなんでしょうね。もうダメかなと思った時期もありましたよ。でもなんとか公演にこぎつけることができて、本当にホッとしましたよ。
――つくる上では問題は?
あまり大きな問題はなかったですよ。ただ彼はストレートなマイムなんですね。押しが強いんですよ。僕がある程度ひな型は創ってますけど、フリーで演技できるところをあらかじめ想定しているところがあるんですよ。そこで彼はガンガン出てくるんです。東京でこうじとやった時は、こっちが突っ込むと、こうじは受けてくれるんです。ところがコ・ジュギョンは受けるんじゃなくて、出てくる感じなんです。彼は2週間の公演で、どんどん出てきましたよ。そうするとこっちも張り合うようになるわけで、なんか『シネ・サーカス』で他の芸人さんと張り合っているころのことを思い出しました。
――公演は成功だったのですか?
100人ぐらい入る小屋だったんですね。最初は40人ぐらい、主催者の話だとあとは入るようなことだったのですが、20人ぐらいの日が1週間ぐらい続きちょっと不安になったし、主催者ちゃんと宣伝してるのかって思うわけじゃないですか、そんじゃなくてもいろいろあったわけですから。ただ奥田さんから聞くと韓国じゃいつもこんな感じらしいですね。翌週になってからお客さんが入りだしました。
――韓国のステージものというのは、口コミで広がるらしいですよ。その意味では2週目になって入ったということは評判を呼んだということなのではないでしょうか。
ところで、『1+1』というタイトルはどこから?
最初彼が『ある2』みたいなことを言ったんですね。僕がそうじゃなくて、まず個々がぶつかるというような意味で、『1+1』がいいんじゃないかって言いました。それは今回のこの公演のひとつの大きな意味かなとも思っています。今回はふたりで一緒にやる作品のほかに、それぞれひとりで作品をやります。『1+1』が、単純に『2』になるのではなく、それ以上のものになる、そんな公演にしたいと思っています。
韓国ではすでに3回公演しているというこの『1+1』を日本でやりたいと思っていた時に、フール祭に出ないかという話が来て、まさにグットタイミングだったわけで、どんな公演になるか山本光洋自身がとても楽しみにしているようでした。ただ一緒にやるというだけでなく、個々の力を思い切りぶつけ合うところから始まり、そこでさまざまな発見をして、またそのうえで何かを創り出す、そんな緊張感溢れるステージになるのではないでしょうか。
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