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週刊デラシネ通信 今週のトピックス(2001.06.07)
プラコメからカバBへ−カバレットBが立ち上がります

 3月に幕を閉じたプラコメに代わり、いよいよ新しいプロジェクトが立ち上がります。
 その名もKabarett B(略してカバビー)。
 プラコメが解散し、なんとかこの集まりを続けたいと有志が何度か協議を重ね、東京アンダーグランドバラエティーショー『カバビー』をはじめることにしました。プラコメ立ち上げ時にも、本格的なキャバレーにしたいと謳ってはいたのですが、さらにそれをすすめていくことになります。
 プラコメはコメディーナイトと『笑い』がひとつのキーになっていましたが、『笑い』にこだわらず、もう少し広い視野でヴァラエティーショーをつくっていきたいということから、このタイトルにしました。
 詳しくは、カバビーの名付け親planBの斉藤朋氏のアピール文をお読み下さい。

 とりあえず今回の『カバビー』には8人のパフォーマーが出演することになりました。とりあえず一回目をやってみて、少しずつ軌道修正をしながら、ゆっくりと歩いていきたいと思います。
 中野富士見町の地下室planBに足を一歩踏み入れてみて下さい。

Tokyo underground variety show Kabarett B
[カバレットB]
日時 6月21日(木)午後7時半開演(バーオープン 午後6時半) 
場所 plan B
(地下鉄丸の内線中野富士見町下車徒歩7分,03−3384−2051)
入場料 1500円(前売り・予約・当日共)
出演者 ふくろこうじ、Mr.Dai、丸ちゃん、タルタルHospital、ケッチ!
アタギシンイチ、まき、ななな、いながきあつし
◎問・予約 03-3403-0561(ACC)、03-3384-2051(plan B)

Kabarett B Tokyo underground variety show
[カバレットB]計画覚え書き

2001.4.28  文責:斎藤朋

■タイトル、企図について

 「plan Bコメディーナイト」の終わり、実験キャバレーの始まりのために――。
 私は当然訪れたことがことがないが、かつてのヨーロッパ、その周辺に素晴らしく魅力的なキャバレーの全盛があったという。いま現在もドイツには「ウィンター・ガーデン」「タイガー・パレス」「ハンザ・シアター」が続いているらしいが(大島氏による)、私が夢想するのは、今まで何処にも存在しなかったキャバレーだ。もちろん日本に戦後定着した接客婦付きバーではなく、パリのモンマルトルに俳優や詩人、音楽家や画家が集って興した「黒猫」や、ウィーンの「ユング・ウィーナー・テアター・ツーム・リーベン・アウグスティン」、ベルリンの「シャル・ウント・ラルフ」、そしてポーランドやロシアへ飛び火して、土着性や周辺文化と混淆・発展した芸術キャバレーが「興ってしまった」ことに興味がある。
 風刺、パロディ、小唄、黙劇、シャンソン、舞踊、話芸、音楽、喜劇、道化、猛獣使い、サーカス、曲芸、大道歌、軽業、腹話術、手品、体操、英扮装芸、手品、ヴォードビル、美術、影絵芝居、朗読、滑稽新聞、人形劇、パントマイム、嘲笑歌、グロテスク舞踊、寸劇、幻燈、ナンセンス劇、応用詩、性格舞踊、アクロバット、闘争歌、シュプレヒコール、暗転舞台、漫談、風刺レビュ団、グロテスク舞踊、ダダ、全員発狂、即興芸、ヌード・レビュ、手回しオルガンと幻燈画、独演キャバレー、時代詩朗読……。
 居酒屋、カフェでありながら「小芸術舞台」発祥の坩堝として多くの芸術家や芸人、文学者がボヘミアン、遊民、アウトローとともに低俗性・文学性・芸術性の未分化の時空間を創りだしていった有名無名の店の数々。キャバレーは本質的に、政治、時代、状況への反逆精神があって「風刺と機知とパロディ」を源とした表現であり、娯しみであり、また闘いなのだったと思う。その根幹を失って低俗な娯楽場と化して生きながらえた店は一部にあるようだが、多くの店は彗星のように消えていった。私達は、この時代、トーキョーにあってどのような「店」というより機会を必要としているのだろうか。先ほど挙げた各地で上演された番組の数々も、いかに様々な実験と創造が行われてきたかを物語っているし、私達はその歴史をもっと知るべきだと思う。かつてのキャバレーを真似するのではなく、当事者にとって最も刺激的で価値のある磁場を興したいということだ。今まで誰も見たことのない表現、芸が生まれるかもしれない、そんな期待と意志、実際が揺濫する架設キャバレーを、どこにもないから今ここで立ち上げることにしよう、というのが発意である。もちろん、3 年間のプラコメの経験と反省を生かした企画・運営が前提となる。
 キャバレーという言葉は、日本での旧来のイメージを払拭するのが容易ではないから、ベルリンの地下にあった「カバレット」というドイツ語読み、響き、イメージをあえて引いた。このplan Bというちっぽけな地下劇場、そしてよその場所でも興りうるひとつの機会、空間として、これから日本で「カバレット」ほんらいの姿と意味を喚起する実験の会となるように。「B 」はplan Bの「B 」であり、けしてA の線ではない。「plan B(B計画)のBとは何か−−Bはそれぞれの時、それぞれの人の中でも不断に変化しています。Brooklyn, Books, Body, Black, Biology, Bolsheviks ・・・。イメージを思いっきりランダムに投げ込んで下さい。そして、plan Bには出入口が4つもあります。ひとつの場所であり、かつ無限につながっていく場所のうちとそと。」(message from plan Bより)として。
 表現方法は、どのような領域でも構いません。たえず参加の窓を世界に開いていたいと思います。テレビの無芸を嬌い、巨大芸能企業の独占を憎み、劇場空間やテント、大道芸ともひと味違う、身体の奥から現れてくるホンモノの芸、その質にうなってみたい。まだ何とも名付けようのない表現が生まれること、それに立ち会えることを期待したいと思います。お客が少し得した気持ちでまた来たいとの思いを胸に帰れるように。今まで見えなかった世界の闇を幻視する起爆剤を握らせていけるように……。
 常設でなくても、架設キャバレーとして、毎回立ち上げてはたたみ、立ち上げる繰り返しによって、芸能と文芸のあたらしい表現のうねりを生み出していきたい。
 「カバレット」訳せば「身体文芸寄席」−−そうだ、ヴァリエテに行こう!


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