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週刊デラシネ通信 今週のトピックス(2001.07.05)
猫サーカスのご案内

 去年一緒に仕事したロシアの人間ボールの芸人アレーシンが、帰国する前に飲んでいた時、「今度帰ったらモスクワで調教された猫を買うつもりだ、犬は主人になつくが、猫は餌で躾けられるので、主人が誰か関係ない、だから高いんだ」と言っていたことが、妙に印象に残っている。
 近所で最近引っ越した家があるのだが、そこの家では10年以上もある一匹の野良猫に餌をやっていた。そこの家が引っ越してから、この猫はパニックに陥ったらしい。別の家の人がこの猫に餌をやるようになって、無事に生きのびているのだが、引っ越した家の人が、この猫のことが気になって、一カ月後様子を見に来た時、この猫は知らん顔をしていたという。この時アレーシンの話を思い出し、なるほどなあと思ったものである。猫はクールな動物なのである。
 この猫を調教したショーが世界的に流行り出している。日本でもだいぶ前に、上海雑技団の鉄棒する猫がコマーシャルでつかわれ、ずいぶんと話題になったことがある。しかしなんといっても猫をつかったショーを最初に有名にしたのは、また今年もやってくる猫劇場のオーナーでもあるククラチョーフである。ククラチョーフはサーカスのクラウンとしてソ連時代から、ちびっこたちのアイドルだった。10年前にモスクワで彼がクラウンとして出演していたサーカスを見たことがあるが、猫をつかったクラウニングは、まさに爆笑ものだった。彼はは、ボリショイサーカスのメンバーとして日本にも何度か来ている。一緒に仕事をしたことはないのだが、何度か話す機会があった。その時は、なんだこいつ、猫以上に気難しい男だなと思ったものである。舞台で子どもたちを熱狂させるユーラ(ククラチョーフの愛称)とは大違いだった。こうしたことはよくあることなのだが・・。
 猫をつかったクラウニングで世界的に知られるようになったククラチョーフが、ソ連解体後サーカスから独立して、猫だけの自分の劇場をつくったのは、大正解だった。猫だけでショーをつくるのはたいへんだったことにちがいないが、その着眼は見事である。この劇場はモスクワで大評判になったのは無理もない。ククラチョーフの気難しい一面を知っていたので、交渉はたいへんだろうなあと思ったこともあり、自分で呼ぼうという気にはならなかったのだが、ずっと気にはなっていた。人を介して、具体的にギャラがどのくらいか聞いたこともあった。
 ひょんなことから去年大学時代の同級生が、この猫劇場を日本に呼ぶことになった。しかも銀座のかつてのセゾン劇場でロングラン公演をすると聞いた時は、ちょっと無茶なと思ったのだが、公演自体は大成功に終わったようだ。成功の原因は、公演前のテレビでの露出度の高さにあったようだ。
 去年の公演を実際に見せてもらったが、人間性はともかく、やはりククラチョーフは世界を代表するクラウンにまちがいないということだった。もちろん表向きの主人公は、猫たちなのだが、それを巧みに操り、演出し、観客をリードしていくのは、ククラチョーフなのである。サーカスの中で何度も出てきて、芸と芸の合間をつなぐクラウニングではなく、自らがヒーローとなることで、彼はのびのびとクラウンを演じていた。
 このククラチョーフのクラウニングを見るだけでも一見の価値はあると思う。
 今年は、「クルミ割り人形」という別の番組をもってくるという。
 日程とか番組の内容については、「世界でたったひとつの猫劇場」というサイトを見るのがてっとり早いだろう。


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