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クマの観覧雑記帳

『垂直飛行異常なし』

出演者 Kaja サンキュー手塚 ダメじゃん小出 サルバドール神山
会場  アイピット目白
観覧日 6月11日
公演時間 90分


 それぞれソロで個性的な活動をしている、くせ者四人が集まっての公演。
 自分たちのネタを別々にやるのではなく、四人でひとつの作品をつくっているのがミソになっている。ふだんでもきっと気が合う四人が、一緒に作品をつくろうよというノリで始まったと思うが、息があって気持ちよくやっているなあという感じは伝わってくる。
 舞台は飛行機、小出と神山はコクピット、手塚とKajaは客室という設定で、ひとりひとりのネタというよりは、ふたりの掛け合いを軸に構成されている。
 四人の役柄は、うまくでていると思う。機内というアイディアもよかったと思う。ツッコミの小出、手塚、ウケの神山、Kajaという感じなのだが、ウケのふたりの個性がうまくでていた。
 前回の『はなつまみ』(手塚、小出、神山の三人のライブ)にくらべて、構成はずいぶん工夫されているし、練られていたと思う。ただこの機内での出来事という大きな枠組みをつくってしまったところで、かえってこじんまりとしてしまったかなという気がした。
 正直いって前半はカッタルかった。特に客室での手塚のネタがちょっと退屈だった。いつものような発想の飛躍がなかったような気がする。手塚の得意とする、心の中のモノローグを、バックに流して、それにあわせた身振りをするというネタがいまいち。ほんとうにモノローグにかぶせてしまった動きというのは、ちょっとマンネリ化したかなという感じがする。ズレをつくっていかないと、このアイディアは生きないと思う。
 後半小出があやしい司会者となった、「世界びっくり人間大集合」あたりで、リズムが出てきた。馬鹿馬鹿しいネタの連発なのだが、ストレートで面白かった。小出というパフォーマーは、こういうあやしげな司会というのが、実にピッタリとはまる。彼を司会にして、なにか面白いショーがつくれるのではないだろうか。
 Kajaが、トルコの占い師に扮し、パームボールを見せるシーンが良かった。今回初参加となったKajaは、ぐっと控えめなのだが、それがかえって印象が強くしたと思う。サーカスのクラウンとしての資質を十分に見せてくれた。              圧巻は、センチューリー神山のインチキマジックショー。小出が紹介、舞台が暗転、スポットがセンターにあたるのだが、見事にそこからはずれてスタンバイしている神山の登場、あせって、スポットの中に入るという間の外し方は見事。大笑いした。マジックのテンポも良かった。
 四人とも日本で有数の個性派パフォーマー。その個性をもっとおもてに出した方がよかったように思える。遠慮というわけではないが、一緒につくる方に重心がかかりすぎたような気がする。もっとアクの強さを全面にだして方がよかったと思う。
 次回はどういうライブになるかわからないが、四人のアクの強さを思い切ってだせるように、誰かに演出をしてもらうというのもひとつの手かもしれない。


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