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クマの観覧雑記帳

「カバレットBin野毛・にぎわい座」VS「野毛大道芸スペシャルナイト」

観覧日 『カバレットB in 野毛』 2002年4月17・18日
      『野毛大道芸スペシャルナイト』2002年4月20日
会場  横浜にぎわい座小ホール 


 横浜野毛に誕生した『横浜にぎわい座』のこけら落とし企画のひとつ、小ホールにかかったふたつのバラエティーショー。ひとつは私も関わった『カバレットB』のスペシャルバージョン、もうひとつは在日の外人パフォーマーたちによる『スペシャルナイト』なのだが、それぞれめざす方向の違いがはっきりして、面白かった。

 お客さんが150人ぐらいつめかけ、満員になったスペシャルナイトの出演者は、日本で活躍しているパフォーマー、デビット・ラムゼイクレイパッチペッピーブルース・スミスミモザブライアン・ホルステリー・プレスニルス・ポールら。ペッピーがクラウンとしてつないで、それぞれが持ち芸をやるという構成。それぞれ達者な演技を見せてくれる。実際に見たことのないパフォーマーではミモザのマジックがなかなか洒落ていて面白かった。ニルスはアクシデントをパワーにしてテンションの高いステージをつくっていた。エンディングをつとめたブルース・スミスの存在感あふれるパワフルな演奏もよかった。お粗末だったのはブライアンのボーリングをつかったジャグリング。一瞬芸なのに失敗はないよなあ。
 大道芸に集まった仲の良い芸人たちが、身内で楽しみながら、ステージでやっているというのは、いいと思う。集まったお客さんも喜んでいた。カバレットBの2日目を見て、このスペシャルも見た外人パフォーマーの一人は、圧倒的にスペシャルナイトの方が面白かったと言っていた。ただやっていることのほとんどは、いつもイベントや大道芸でやっているネタばかりで物足りなさもあった。せっかくなのだから、新しいものをつくるという挑戦があってもいいのではないだろうか。

 その意味でいままでplanBで公演していた新旧のメンバーが集まっての公演となったカバレットBからは、新しいことをやろうとする意欲を強く感じた。例えば、普段はソロで公演している神山一朗Kajaが、ふたりで組んでメンテナンスもののランニングコントに挑戦していたし、ダメじゃん小出VJコミックカットは、にぎわい座のオープンにひっかけたコントや映像をつくってくれた。久しぶりの参加になったハンガーマンも、野毛にひっかけて雪竹のパロディーを演じた。こうじちからのふたりも久しぶりにコンビを組んで、グロテスクなコントをつくったし、CHiCAシルヴ・プレバーバラ村田重森一小林誠安田太朗らのマイムの連中も凝縮度の高い作品を作っていた。構成はもう少し工夫が必要かもしれないが、メンバーが自分たちで考えてひとつのショーをつくったことは評価したい。

 芸を表に出すという意味では、在日外人パフォーマーの方が上であることは確かであるが、自分たちの潜在的な可能性に対して向かっていく姿勢という面では、カバレットBのメンバーが上だったと思う。
 日本でまだ定着していないヴァラエティーショーをこれからつくっていくために、こうした場をつくり、これを楽しむお客さんを増やしていくことが大事なのだろう。
 その意味ではいまどうしようか迷っている『カバレットB』は、どんなかたちにせよ続けていかなければと思いを新たにした。これが大きな成果だったかもしれない。


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