月刊デラシネ通信 > その他の記事 > クマの観覧雑記帳

クマの観覧雑記帳

ふくろこうじソロライブ『袋小路』

出演者 ふくろこうじ
会場  plan B
公演時間 1時間
観覧日 9月12日午後7時半


 ちからとのデュオでのソロライブ、ダメじゃん小出とのジョイントライブはあるものの、まったくのソロは、今回が初めてだったが、実に見応えのある公演だった。
 まず感心したのは、ひとりで出ずっぱりで、暗転による転換なしで、ショーをこなしたことだった。しかもセリフなしの、マイム系のもので、挑んだことに、なみなみならぬ意欲を感じた。あとで本人に聞くと、初めてのソロだったので、せめて暗転転換なし、セリフなしという目標だけを決めてやってみようということだったが、そうしたいわば足かせを自分でしたことにより、全体の構成を組み立てることができたのだと思う。そのため着替えを要するところでは、客前で紐靴を履くのを見せざるを得ないという場面もあったが、それは几帳面さをおかしさに変えることにもつながったと思う。
 プラコメやカバBで見せてきたネタのなかで、球体に入ったマルオ君、段ボールをつかった着替えのネタを最後にもってきたが、このつながりが非常によかったし、段ボールものは、カバBでやったときよりも、ずいぶんと練られていた。
 いままでどちらかといえばアイディア先行で、それをもう一歩突っ込めずにいた感があったのだが、今回はずいぶん突っ込み、段ボールものやマルオ君は、ネタ的にも出来上がったと思う。
 段ボールにしてもそうだが、こうじはモノの使い方が実にうまい。なんでもないあたりまえのものを、肉体の動きでぜんぜん別なものにしてしまうというところに、彼の持ち味があると思う。
 オブジェクトシアターなのか、マイムなのか、本人のなかで自分がめざす方向がまだはきっきり見えていなかったとは思うが、このソロライブをしたことで、一皮むけて、少しは見通しが開けたのではないだろうか。
 今回はあえて『袋小路』に自分を追い込んだことで、進むべき道が少し見えた、そんな気がする。
 その意味でも、この公演に立ち会えたことを幸せだと感じている。


目次へ デラシネ通信 Top 前へ | 次へ