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クマの観覧雑記帳

『坊屋三郎追悼公演−ボーイズ横浜に大集合!』

会場   横浜にぎわい座
観覧日  2002年8月5日
公演時間 3時間


 ボーイズというのは、男性グループによる歌謡漫談のこと。いま東京では4つのグループが活動している。つい最近亡くなった坊屋三郎は、あきれたボーイズ(益田キートン、山茶花究、川田春夫らで結成)という昭和初期に一世を風靡したボーイズのメンバーだった。ボーイズヴァラエティー協会の名誉会長だった坊屋を偲んで、4つのグループが集まったわけだ。この他にもこの協会に所属するコントや漫才のグループが出演、3時間たっぷりのにぎやかなショーになった。
 『笑点』などで、ボーイズのショーを見ることはあったが、生で見るのは初めてだった。追悼公演ということもあったのかもしれないが、出演者にはたっぷり持ち時間が与えられたようで、みんな時間を気にせずのびのび公演していた。存分に笑わせてもらった。感想を一言でいうならば、いいにしろ悪いにしろレトロ。歌謡曲、浪曲、民謡、こうした日本の大衆芸能を支えてきた音楽ものを、これだけ笑いにとりくんで多彩に見せるというのは、ある意味でたいしたもんだと思う。

灘康次とモダンカンカン
 あきれたボーイズの伝統を受け継いだ正統派のボーイズと言えるかもしれない。ギター、ベース、サックスという4人構成で、帽子に縦ストライプのジャケットを着てというスタイル自体が、すでにレトロである。バンマスは、現在のボーイズバラエティー協会の会長でもある。

大空なんだ、かんだ
 オーソドックスな漫才なのだが、民謡と浪曲をとり入れている。合いの手を笑いのエキスにしている。

アンクルベイビー
 坂田利夫のようなちびのおっちゃんのボーカルとギター伴奏での漫才。

チャーリーカンパニー
 警察官と土方のふたりの、ラッキーセブン風コント。世相をネタに、生活に苦しむ土方が、国の立場を代表する警察とやり合う。ところどころで客席から拍手が湧いていた。

バラクーダ
 4つ残っているボーイズのなかでは、一番モダンなグループ。ここはオリジナル曲が売り物。「日本全国酒を飲む音頭」がかつてヒットしたという。

 中入りのあと、司会をつとめた前田隣(元ナンセンストリオ)、灘康次、旭五郎(東京ボーイズ)、岡本圭司(バラクーダ)の四人による坊屋三郎を偲ぶ座談会。都合よく耳が聞こえなくなる人だよねという話には笑ってしまった。カバレット・チッタに出演してもらうおうと電話した時も、確かにそうだった。「耳が遠いんだよ、書いて送ってくれ」と言いながら、しっかり「ギャラは、いくらだよ」って言っていたのを思い出した。

東京ボーイズ
 アコーディオン、ギター、ベースの三人組。一番癖がなく、すっと見れた気がする。

玉川カルテット
 一番キッチュだったのが、このグループ。着流しスタイルがそれだけで、キュッチュなのだが、岡八郎に似たリーダーをはじめ、みんなどぎつい顔をしている。しかもハリセンで叩く、叩く。オーバーなアクションが、結構すごかった。

 歌謡曲とか浪曲とか民謡というジャンルが廃れてしまうと、ボーイズというのはなくなるのだろうか。バラクーダのようなオリジナル曲を売り物にすることもできるし、協会には入っていないワハハ本舗のポカスカジャンのような、今の音楽をつかったテンポのいいグループもある。
 ただしょぼいアンプがどーんとあって、ギターで「タララッタ、タララ」というなさけないイントロから始まるこんなレトロな漫談もいいよなあと思う。
 テンポのいい漫才やコントもいいが、こういったのんびりとしたテンポの漫談も悪くない。三人組だとそう感じないのだが、四人組になると、かならず余っている人がいるというのが、結構おかしかった。進行している話と無関係にボッと立っているだけの人がいて、不思議な間ができることにもなる。
 カバレットチッタなんかで、思い切りレトロな歌謡曲とか浪曲、民謡をつかったボーイズの公演をはさむとどんな風になるのだろう。にぎわい座のお客さんはほとんどが中高年だったが、若い人たちが見たらどう感じるのだろう。
 スタイルを変えるのではなく、そのままこんなレトロなショーも見せたら面白いと思うのだが・・


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