月刊デラシネ通信 > ロシア > モスクワスクラップ帳 > 第61回
2007年2月のモスクワの週刊誌『論拠と事実』からスクラップした記事。
2007年2月5号
映画ゲーム
鷲の中の鷲
公演案内 『リア王』
エリツィン一家の消息
どうして文化人たちはベレゾフスキイからの贈り物をもらうのか
2007年2月6号
ステージ『老いたクラウンが必要だ』
スター ―― 愛の名のもとで
一匹狼
日本現象
2007年2月7号
南極でも結婚式
2007年2月8号
公演予告 サーカス
「ブラ・ブラ」はいらない
ロシアの島
初演と映画監督 アレクサンドル・ポロジャンスキイ
ニコライ2世は無能だったのか、聖人だったのか
2000年に全国で56しかなかった映画館は、いまではモスクワだけでも96のシネコンができるまでに映画産業は成長している。映画人口は増え続けている。特に若い観客が大幅な伸びをしめしている。
確かにロシアはいま映画ブームにわいているのは間違いない。ひとつはビジネスとしての魅力が大きいのだと思う。
去る1月27日今年度の最優秀映画賞「金の鷲」賞が発表された。今年の最優秀作品賞は「島」。「島」はこの他にも、最優秀監督賞をはじめ、6部門で受賞。
どんな映画なのだろう。日本で公開されることはないとは思うが・・・
今週のお勧め演劇のひとつに、鈴木忠志演出「リア王」がチェーホフ名称モスクワ芸術座で2月1日から。 誰にお勧めかというと、「センセーションが好きな人、全ての俳優は男が演じている、娘の役も男が演じている」
鈴木天皇は、相変わらずロシアを舞台にいろいろやっているようだ。
2月1日で76才になったエリツィンだが、家族はいま何をしているのかという質問への答え。かつての大統領補佐官娘のタチアナと三番目の夫は、いまほとんどをイギリスで暮らしている。ユマシェーワは、「エリツィン基金」の代表をつとめている。
ほとんど近況が伝わってこないエリツィンは、まだ76歳だったのですね。
先頃、「凱旋」というベレゾフスキイがスポンサーの賞(5万ドル)をシェフチク、リャザノフらが受賞した。どうして文化人たちはこうした賞をもらったのかという読者からの質問に、DDTのシェフチュクが答える。 「正直ベレゾフスキイは好きじゃないが、審査員の人たちはみんな尊敬する人だったので、そこで認められたので受け取ることにした。ただ賞金はモスクワやサンクトの孤児院、チェチェンの戦争孤児のために寄付することにした」
やはりシェフチュクは骨のあるアーティストである。
ユーゴザーパドヌィイ劇場の新作。ベリャコービッチ演出・出演。3人の引退したクラウンたちが、謎めいた指令を受け、ひとつの場所に集められる。仕事があるとの話だった。用なしと思われていた3人だが、用なしではないことがわかる。 古典的、知的、ナイーブな道化愛好者向け。
見たい! 芝居のストーリーも興味深いし、これをベリャコービッチがどんな風に演出しているのかとても気になる。
ソ連を代表する映画女優リュボーフ・オルローワの小伝。牛乳売りをしていた少女が、映画館でピアニストをし、さらにネミロビッチ・ダンチェンコの音楽劇場に入団し、そこから次第に頭角を現す。ひとりめの夫との別れ、さらにはアレクサンドロフと出会うまでなど。
アレクサンドロフの愚作「サーカス」でしか見ていないが、なかなかロシアでは根強い人気をもった女優さんらしい。
1974年3月5日世界中は、フィリピンのルバング島で44年から森にずっと隠れていた52才の日本兵が発見されたというニュースに震撼した。本誌でも2004年8月に「ラストサムライ」と題して小野田寛夫さんのことを紹介したが、今回は直接本人との取材に成功した。 もしあなたが、谷口将軍が自分の命令を変えなければ、あなたはいまでも戦争していましたかという質問に、「はい」と答えている。
正直まだ生きていたのかというのが最初の読後感。まだ元気なようだ。日本ではほとんど話題になっていないが、相変わらずシャキッとした人である。
ロシアで心筋梗塞で亡くなる人は30万人。これを予防するために、いくつかの有効な手段がある。ひとつは食べ物なのだが、穀物や油ものを少なくとることが大事だ。これについては主食として魚とお茶をとっている日本が参考になるだろう。日本は先進国のなかでも最も心臓病がすくない国である。それはこの食事が関係している。
日本食が日本人の長寿に関係するという話題は尽きない。心筋梗塞は日本でも多いのではないかと思うのだが。魚を食べれば長生きできるような幻想を抱いてしまうのは、ロシア的かもしれない。
第6の大陸南極で、最初の結婚式が行われたと話題になった。ここにほんとうの教会がオープンし、ロシア人とチリ人の結婚式が行われた。これをつくったのは元極地探検隊員のピョートル・ザジロフ。彼はいまから26年前に800mの高さから落ちて、ほとんど無傷で生き残った。パラシュートが開かなかったのだ。ただその時無意識ななかで、下でスカーフをふる母の姿を見る。それをめざして落下、奇跡的な生還となった。この奇跡のために教会をつくることをずっと夢みていた。
800メートルの高さから落下して助かったというのは奇跡というしかない。教会をつくりたくなるのも無理はないかもしれない。
新しい番組のタイトルは「私の世界−マネーシュ」と題された作品。象、針鼠、クマ、猫、チンパンジーなどが出演するほか、イリュージョン、アクロバット、特別な才能をもつクラウンなどによる、とても楽しいショーです。
西田さんが主宰している沢入国際サーカス学校の卒業生のデュオ・バンブーも、この番組に出演している。なんと去年リトルワールドに出演したマクシム・ファミリーも出演している。
レンテレビで最近はじまったお笑い番組「ブラ・ブラ」はいらないについて。論拠と事実の記者が、撮影風景を見学することができた。
日本でもお笑いブームが続いているが、ロシアでもこの手のお笑いバラエティーショーが増えているような気がする。
かつて中国にあった白衛軍の首都ハルビンからの特別レポート。1945年にここには100万人のロシア人が住んでいた。しかし1956年に残っていたロシア人は、わずかに200人あまりであった。
ハルビンのことを最近調べ始めているので、とても参考になった。バイコフがハルビンを去ったとき、ロシア人はこれだけしか残っていなかったのだ。
「ジャズマン」の脚本を書いたボロジャンスキイの新作は「ファベルジェの影」。また20−30年代のパリの亡命ロシア人、ツヴェターエワとエフロンをテーマにしたテレビ映画のシナリオもいま準備中
オデッサを舞台にした「ジャズマン」はとても好きな映画。ツヴェターエワのテレビドラマも気になる。
2月革命が起こって90年になる。この時退位させられた最期のロマノフ王朝の王となったニコライ2世への評価について、ワシリイー・セカチョフが答える。セカチョフは、ニコライ2世は決して無能でもなかったし、教養もあった人間だったが、あれだけの混乱を巻きおこした背景には、民衆を信じすぎたということがあったのではないか。
日本にもやってきたニコライ二世については、日本でも何冊か本が出版されている。ロマノフ一家の殺害についてはラジンスキイなどが劇化しているが、実際の評価は、ロシアでは定まっていないような気がする。こうした評価がこれからいろいろ出てくるのかもしれない。
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