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カフェ・クマ−談話室 過去ログ

2004年8月

2004年8月25日 水曜日 2:07a.m. オリンビック雑感2 女子マラソン

最後の5qぐらいからは、ずっと頑張れ野口と叫び続けていた。今回のコースは本当に過酷だった。あの坂、そしてとんでもない暑さ、画面に何度かゲロを吐く選手の姿が映し出されていたが、あんなレースはいままで見たことがない。ゴールインした野口も吐いていたもんなあ。野口の優勝、そして土佐と坂本の入賞、日本選手のがんばりには、感動させられた。ただ今回のレースで一番印象に残ったのが、ラドクリフの脱落シーン、泣きながら、レースを中断したところだ。いままで負け知らずで、驚異的な世界記録をつくってきた彼女が、まさかあそこで、泣きながらレースをやめるとは・・何故彼女はあの時泣いたのだろうか?もうこれ以上走れない自分に対して、不甲斐ないから泣いたのだろうか?そうではないと思う。足が動かない、一歩も足を踏み出すこともできないぐらいに肉体的な限界に面して、泣かざるを得なかったのだと思う。翌日の新聞で彼女のインタビューを読むと、リタイヤした理由がわからない、あまりのショックに涙もでなかったと語っていた。とても正直な人だと思った。過去4回走ったレースですべて優勝、負け知らずの彼女が、リタイヤした自分に対して、正直に理由がわからないと、告白するなかに、敗北という現実に、ぶちあっている人間の姿を見たような気がする。敗北に、とまどう姿をあからさまに見せている、そこに彼女の素直さが感じられた。
敗北という現実を逃れるため、次への勝利に向かって、その理由を探りたくなるのが人情だと思う。
でもラドクリフは、敗北の原因を探ることより、負けたことにうちひしがれていた。勝つためではなく、負けたことの重さ、それをしっかり受けとめようとしているラドクリフ、とても素敵だと思う。
アトランタで、期待を一心に浴びて、負けた浅利純子というランナーのことを思い出した。彼女が負けた理由を説明できなかった時、コーチが、靴下を履かずに素足で走って、豆ができたからだろとって、はっきり言えよと浅利を叱りとばしていた。敗北に理由を求めてはいけない。それを受けとめなくては。ゴールインした野口の笑顔も素敵だったけど、負けをはっきり認めたラドクリフのあの涙、たぶん自分は忘れることができない。


2004年8月20日 金曜日 2:55p.m. キュピキュピグランド歌謡ショー キャバロティカを見る

久しぶりに思い切り裏切られてしまった公演だった。グランド歌謡ショーでカバレットとエロティカが、一緒になったタイトルを見ちゃえば、見なくてはいけないと思ってしまうのは当然のこと。しかも映像もふんだんに使っているとなったら、気にならないのがうそ。しかし・・・
京都のパフォーマンス集団らしいが、ビジュアル的(チラシとか)に見ると、かなりキュッチュな感じがするし、エロっぽさも売りになっているようなのだが、衣装とかぶりものがキュッチュなだけで、全体的にモノトーンなのが、なによりもNG。構成が、女性ヴォーカルの歌と、生演奏、そしてダンス、たまに入る映像と、ワンパターン。歌がメインなわりに、はっきり言って下手な部類、しゃべくりも関西圏のわりには、面白くない、なにか色があればいいのだが、それもない。バックダンサーも昔のゴーゴーのような振付でワンパターン。わざとこうした振付にしているのだろうが、それにしてもあれだけくどくやられると、さすがにいい加減にしてという気になってくる。映像に関しては、プロジェクターを7台つかって、かなり斬新な内容になっているが、使い方が、バックグランド的で、慣れてくると、フーンという感じ。上半身裸の女性のダンスもたまに出てくるがが、カバレット的なあざとさもない。関西系にしては、味付けがうすい。ステージにはかなり金をかけている、プロジェクターもそうだし、ミラーボールも5台ぐらいつかっていたし、電飾もばっちり、花道あり、うらやましい限りだ。前の20席はテーブル席で、ワインとオードブル付で、カバレットさを出そうとしているのだが、スパイラルという空間ではやはり無理がある。
当日券5500円は高い!
ただ見に行って良かったとは思っている。今度自分がやるカバレットのイメージつくりには、参考になった。
よしやるぞという気合が入ったのは事実。



2004年8月19日 木曜日 3:44p.m. フールBネタ見せ報告

昨日(18日)planBで、来週25日・26日公演があるフールBのネタ見せがあった。出演するVJコミックカット、安田太朗、加納真美の3人がそろって、ネタを見せてくれた。フールBは、ネタ見せ、リハ、本番初日と制作者が立ち会って、意見をかわし合いながら、つくっていこうというのが特色。前回のフールBで、出演者からこうした制作過程を共有することはとても良かったという声がでていた。初めてネタを見せる、そして見る、それはなかなか緊張するものである。
3人とも非常に丁寧に、時間をかけて、じっくりつくりこんできた。ここでネタの内容を紹介するわけにはいかないが、いいものができるそんな手応えを感じた。制作側からの意見の他に、出演者からもアドバイスが出され、それを踏まえて出演者がそれまで考えてきたアイディアについて話したりとか、本番だけ見ては見えないプロセスがわかって、なかなか刺激的であった。
こうしたやりとりのなかから、今回のフールBでやりたいことが生まれて来るような気がしている。
25日・26日の公演がとても楽しみになってきた。










2004年8月18日 水曜日 0:19p.m. オリンピック断章 1  金メダリストの顔

オリンピックはやはりライブで見たいもの。でもそうすると寝る時間がなくなる、そんな苦しみの日々が続いているのだが、わずかの夏休みを利用して、16日深夜の男子体操団体を最初から最後まで見ることができた。実にスリリングな展開だった。それにしても日本選手、みんないい顔していた。金メダルを争う、ルーマニアとアメリカの選手が次々に失敗をするなか、最後の演技鉄棒に向かう、選手の顔が、とても印象的だった。勝負に挑む闘志を秘めた静かな佇まいというようなものが感じられた。ルーマニアの選手たちはみなおどおどしている感じさえしていたのに。もちろん見ている時はドキドキしていたが、あの顔を見て、大丈夫だろうと思った。
今回のオリンピックは、選手の顔が気になっている。谷本にしても、北嶋にしても、メダルをとった選手の勝負に挑む前の顔つきは、勝負を賭けることに集中しているそんな迫力が伝わってくる。だからこそ勝ったあとのあの雄叫びが自然に出てくるのだと思う。水泳自由形200メートル決勝のソープもそうだった。真剣な表情の中に、固い意志のようなものが体全体からただよっていた。
話はちがうが、先日作家の吉村昭さん講演会の時、ちょうどサッカーのアジアカップの決勝戦があって、先生が、あんな状況のなか、みんな日本人の選手の顔が良かったね。落ち着いていたし、しっかりしていたし、日本人は大丈夫ですよということをおっしゃっていたのを思い出した。そうあの時の、宮本とか、川口とか、いい顔をしていたもんなあ。プレッシャーに負けないだけの、勝つという信念に裏付けられた自信、そんなものが、感じられた。
日本人は大丈夫ですよという吉村先生の言葉ではないけど、ずいぶん日本選手も変わってきたような気がする。




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