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今週買った本・読んだ本 6月17日

『日本縦断・徒歩の旅』
著者 石川文洋
出版社 岩波書店(岩波新書)
定価 700円+税
購入の動機  新聞の広告を見て

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 今年2月20年近く続けていたジョギングをやめることにした。2年前から体調を悪くして1年半ほど走るのを中断していた。少しずつ体調も戻り、去年の暮れから再開したが、やはり走ることでかなり身体に負担がかかることがわかり、やむを得ずやめる決意を固めたのだ。ジョギングといっても毎日していたわけではなく、走りたい時に走る気まぐれジョガーだったのだが、毎年ロードレースを走るという目的のため、それなりに走り込み、5年前には待望のフルマラソンも完走することができた。それゆえ一時的かもしれないとはいえ、走ることを諦めたときには、若干の寂しさがあった。
 走るのをやめた頃から、毎朝一駅分とばして約40分ほど歩くことを日課にした。少し早起きしなくてはならないのだが、いろいろコースを変えてみたり、歩く喜びも生まれてきた。そんな時石川さんのこの本がでることを知って、早くから読みたいと思っていた。

 石川さんは65歳になったのを期して、かねてからの夢であった日本縦断の旅を徒歩でやろうと思い立つ。健康のために始めたウォーキングと、日本縦断の旅をドッキングさせたわけだ。とったコースは、宗谷岬を出発点に、日本海沿岸を歩き、故郷沖縄那覇までの3300キロ、およそ5カ月かかって歩き通す。いやあいいなあ、こんな旅。自分にも太平洋側から日本海側まで日本列島横断登山をしたいという夢があったのだが、おそらく体力的には無理だろうなあ、だったら日本縦断歩いて旅しようかという思いがふくらんでいたときだっただけに、この本にはすっかりはまってしまった。
 本業がカメラマンだけに、徒歩の旅先で撮られた写真も多数入っている。風景というよりは、そこで働く人々、暮らしている人々の顔にフォーカスがあてられている。この旅も、自分を見つめなおそうとか、いい景色を見ようとかではなく、あくまでも自然体、歩く旅のなかでの人々との交流、旧友たちとの再会、さらにはかつて石川さんのカメラマンとしての旅の思い出、平和への思いなどが、素朴な語り口で語られている。

 久しぶりに気持ちよく読み終えられた一冊だった。そしていつの日か自分も日本縦断の旅をしようという夢を駆り立ててくれた本でもあった。
 いまは仕事をもつ身で、いつ実現できるかはわからないが、こんな旅に出たいものだとほんとうに思う。
 さしあたっては、今年の暮れあたりに、伊豆あたりをゆっくりと歩いてみようと思っている。
 そして日本縦断の前に、イザベラ・バードの日本奥地紀行の足跡を追った旅をしたいとも・・・・。若い時は、小田実の「なんでも見てやろう」とか、沢木耕太郎の「深夜特急」を読んで、旅への夢を募らせたものだが、この石川さんの本は、それと同じような興奮を呼び起こしてくれた。50になって、こんな旅のありかたがあることを教えてもらったことにとても感謝している。いい本に出会えた。


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