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【連載】モスクワスクラップ帳

第59回

2006年12月のモスクワの週刊誌『論拠と事実』からスクラップした記事。

2006年12月49号
 ポロニウムの霧は世界を覆う
 さらばサマゴンカ
 ロシアジャズの伝説
2006年12月50号
 どうして西側はロシアの古典をとりあげるのか
 初めて
 狼時計
 ユーリイ・ニクーリン「クラウンが絨毯の下に隠したもの」
2006年12月51号
 近況 アレクサンドル・ソクーロフ
 ポロニウムは白樺(ベリョーズ)にねばりつく
 彼らの黄金の半分は
 デニス・マツエフがドゥーロフおじいちゃんの役を
2006年12月52号
 リトビネンコ事件
 アンケート 一番信頼できる政治家
 シンボルの役で
 信じられないけど、事実
 初演と演出家


 

2006年12月49号

ポロニウムの霧は世界を覆う

リトビエンコの死についての5つの仮説と、それに対する賛否両論の意見、さらにはそれについてのコメント
 1.彼はあまりにも知りすぎてしまい、クレムリンによって殺害された
 2.ロシア愛国者による復讐
 3.プーチンを陥れる
 4.チェチェン人による犯罪
 5.核爆弾製造中の不注意による事故。

ますます深まるリトビエンコの死に対するこの仮説は、それなりに興味ぶかいものがある。チェチェン人による犯罪という説が出るところが、いかにもロシア的といえないこともない。

さらばサマゴンカ

アルコールの取りすぎは健康を冒す、そのためにサマゴンカ(どぶろく)追放するキャンペーンのようにみえるが、実は新しいドブロク製造機「魔よけ」の宣伝。

最近サマゴンカにはまっているのでこの記事はすぐに目に飛び込んできた。要は、新しいサマゴンガ製造機の宣伝。してやられた!日本人でもだまされたのだから、酒好きのロシア人にはインパクトがあったろう。ちょっと欲しい気もする。

ロシアジャズの伝説

ソ連時代のジャズの大御所、60年代から84年のアメリカ亡命までソ連ジャズの中心人物のサックスプレイヤー、アレクセイ・ズボフが25年ぶりにモスクワで公演。

 

2006年12月50号

どうして西側はロシアの古典をとりあげるのか

先日イタリアで制作された「静かなドン」がロシアでも放映された。現在ルーマニア人の監督で「戦争と平和」も撮影中、ゴーゴリの「ヴィ」も外国人が撮影しているという。なぜ西側はロシアの古典をとりあげるのか。「映画芸術」の編集長の答えは、現在世界の映画界は新しいテーマを探している。そのためにロシアの古典に目をつけている、これは絶対に損をしないからだ。

そういえば先日NHK−BSでイギリスで制作された「ドクトルジバコ」が放映されていた。ロシアで制作されたテレビドラマ「ドクトルジバゴ」は、ヤンコフスキイも出演していたようだし、こっちの方が見たい。

初めて

赤の広場でアイスホッケーの試合がおこなわれた。切符は3万ルーブル。翌日には初めてのボクシングヘビー級のタイトルマッチが開かれた。いずれも初めての試み。

いかにもバブルでわいているロシアならではのイベントといえるかもしれない。

狼時計

モスクワ中央人形劇場の時計人形で演奏されている曲名はなにという読者の質問に、この劇場の演出家で創始者であるセルゲイ・オブラスツォフの孫娘エカテリーナ・オブラスツォーヴァが答える。演奏されているのはロシア民謡の「庭か畑へ」。そもそもはプラハでオブラスツォフが人形時計を見て、感動したのがきっかけ。ひとつのジョークがあります。モスクワでは朝の11時からウォッカが売られていました。そのためここの劇場の11時には狼が出てくることになり、それから狼時計という愛称がつきました。

この時計はほんとうに楽しい。いつも時間になると子どもたちが寄ってきていた。オブラスツォフは酒もタバコもやらないので、こんな風にしたのだろう。

ユーリイ・ニクーリン「クラウンが絨毯の下に隠したもの」

12月18日はニクーリンの生誕85周年にあたる。本はそれを書いた人が死んでも生き延びることができる、でも俳優は生きているときしか記憶されない。でもニクーリンは死後10年経っているのに、まだ彼は生き続けている。サーカスのなかでクラウンは最も難しい仕事だと言われている。すべてができないといけないからだ。でもニクーリンはなにひとつ上手にできるものがなかった。クラウンの技術で学べないものがある、それは魂だ。ニクーリンにはこれしかなかった。だから彼はみんなから受け入れられたのだ。 いまモスクワのニクーリンサーカスでは若いふたりのクラウンデュオ、イリダル・ムメメトジャノフとルスラン・マルチェスキイがニクーリンのやっていたレプリーズをそのまま演じている。昔のニクーリンを知っている観客にすればなつかしいものであり、見たことがない若い客にとっては新しいものだ。

いい記事である。ニクーリンはクラウンを生きた人なのである。若いクラウンがどんな風にニクーリンのネタをやっているのか見てみたい。

 

2006年12月51号

近況 アレクサンドル・ソクーロフ

現在撮影中の映画「アレクサンドラ」について。これはチェチェンに軍役で行った孫を訪ねる女性の話で、ソクーロフ自身がシナリオを書いた。この女性を演じるのは、歌手のヴィシネフスカヤ。

話題作になるだろう。完成が待たれる。日本でもきっと公開されるだろう。

ポロニウムは白樺(ベリョーズ)にねばりつく

リトビンネンコ事件に関して、ふたりの人物が浮かび上がっている。ルゴーヴィとコフトゥンのふたりである。彼らはかつてのリトビンスキイの同僚であった。同時にかつてのリトビネンコのスポンサーともいえるベレゾフスキイに対しての疑いもでてきている。

「論拠と事実」の論調を見ていると、ヨーロッパのプーチンが仕掛けた犯罪だという風潮に対して、反プーチン派が仕掛けたものだというように持っていきたいような気がする。

彼らの黄金の半分は

読者の質問に答えるかたちで、ロシアの富豪の奥さんの経歴、どこで夫と出会ったかについて。 例えばアブラモビッチの奥さんの経歴は、スチュワーデス専門学校卒、仕事もスチュワーデス、アブラモビッチと出会ったのも飛行機のなかだという。子供は5人。メジュプロムバンクの頭取の奥さんは、オペラ・バレエ劇場の俳優で、ベレメエンコとは「雪の女王」美人コンテストで出会ったという。

ヒルズ族とたいして変わらないね。

デニス・マツエフがドゥーロフおじいちゃんの役を

芸術アカデミー「クリトゥーラ(文化)」のスターたちが、モスクワのサーカス場のアリーナで、特別演し物を演じた。

サーカス場の中で芝居をやったというのではなく、サーカスの演し物をサーカス場でやったということらしい。

 

2006年12月52号

リトビネンコ事件

直接リトビネンコ事件に関しての容疑ではないが、先週日曜日にナポリ空港でマリオ・スカラメッラが逮捕されたことが注目されている。彼はリトビネンコが毒殺された日に会ったうちのひとりである。 さらにこの記事ではアメリカ、イギリス、ドイツなどのマスコミがこの事件をどのように報じているかについても報告している。

アンケート 一番信頼できる政治家

500人を対象として、5〜6人選んでもらう。
 プーチン 25.3%
 メドベージェフ 12.8%
 ショイグ 8.7%
 イワノフ 8%
 ミラノフ 5.4%
 フラドコフ 3.9%
 ジリノフスキイ 3.7%

確かにプーチンが一番信頼できる政治家に選ばれてはいるが、思ったより支持率が低いような気もする。

シンボルの役で

3年前にドゥーロフ動物劇場に見ず知らずの人から電話があり、誕生日に豚をフレゼントしてくれるというのだが、これをいらないかという話しだった。このブタはドゥーシャと名づけられ、劇場でいまも元気に出演している。

来年の干支にちなんでの話題かも・・・

信じられないけど、事実

小さいコラムの欄に、写真入りで、かつて「フォーブス」で世界一の金持ちとしてとりあげられた71才の堤義明が、詐欺罪で有罪となったという紹介。

詐欺罪ではなかったような気がするが、要はそういうことなのだろうな。

初演と演出家

モスクワ中央人形劇場の演出家エカテリーナ・オブラスツォーワのコメント。 今年は劇場創立75周年、セルゲイ・オブラスツォフ生誕105周年のシーズンにあたっている。これを記念して人形劇フェスティバルを実施した。新作について。また弟のピョートルと一緒に「あたりまえでないオブラスツォフ」という本もだした。

オブラスツォフの名作「めずらしいコンサート」(日本公演の時にはこのタイトルで上演された)の原題は、「あたりまえでないコンサート」。それにちなんだ本のタイトルなのだろう。この作品は何度も見たが、本当に傑作人形劇である。人形劇のカバレットとでもいえるかもしれない。


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