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【連載】モスクワスクラップ帳

第65回

2007年8・9月のモスクワの週刊誌『論拠と事実』からスクラップした記事。

2007年8月31号
 アレクサンドル・ソルジェニツィン「西欧は戦々恐々とロシアの強化を受け入れた」
 ロンドンの寡占支配
 ソルジェニツィンは何故外国人としか付き合わないのか
2007年8月32号
 ヒディングはいくら?
 ポロニウムと大英帝国
 ロンドンの寡占支配2
2007年8月34号
 泣くなよ、泣いたらお前を笑うぞ
 チンパンジーショー
2007年8月35号
 ミハルコフの帰還
2007年9月36号
 イシコフ・コブゾン「国が私たちを愛し、守ってくれるのをいつ見ることができるのか」
2007年9月37号
 30人のアナスターシャ
 ベネチア映画祭の勝利者ミハルコフ
 イザドラ・ダンカン「脱衣所での愛」
 ベネチア2007「クスクスかウォッカか?」
2007年9月38号
 我等のポップ街のもやい杭
 ロストロポービッチの宝物が大衆へ?
 「モンゴル 第一部」
2007年9月39号
 12人の良心の人質たち
 子供たちの法律は守られていない


 

2007年8月31号

アレクサンドル・ソルジェニツィン「西欧は戦々恐々とロシアの強化を受け入れた」

ずっと沈黙していた作家ソルジェニツィンが、ドイツの雑誌「シュピーゲル」でインタビューを受ける。この記事の中から断片を紹介。富豪について、民主主義について、野党について、プーチンについて、選挙について、西欧について、そして自分自身について語った。

今年国家賞を受賞したかつての反体制リーダー。豊かな経済力を背景に国際社会でのリーダーシップをとろうとしているプーチン・ロシアのイデオロギーにはならないとは思うが・・・。いまのプーチン・ロシアをどう思っているのかがひとつのバロメーターにはなるだろう。

ロンドンの寡占支配

イギリスのなかでロシア人の進出が目立っている。ロシアの新富豪がプレミアリーグのオーナーになっているのは有名な話だし、実際にここ数年ロシアのビジネスマンは、ロンドンの高価なアパートや住宅を購入しまくっている。ロンドンだけでおよそ40万人のロシア人が住み着いているという。論拠と事実では、ロシア人ビジネスマンが多く住む、ロンドン現地に取材した。

リトビエンコ殺害でスポットを浴びたロンドンのロシア人社会。この背景にはベレゾフスキイが暗躍していると暗示しているような内容といえなくもない。

ソルジェニツィンは何故外国人としか付き合わないのか

「私には理解できない」に投書された質問に対して、ソルジェニツィンの妻のナターシャが答える。何故外国の雑誌にということよりも、何故いまなのかということに注目してもらいたい。ロシアに対するヨーロッパでの違った見方が生まれているからこそ彼は、ドイツの雑誌のインタビューに答えようとしたのだ。

ソルジェニツィンが何か語ったのかが気になる。

 

2007年8月32号

ヒディングはいくら?

ベラルーシがサッカーのナショナルチームの監督としてドイツ人のシュタンゲと契約した。彼の報酬はいくらくらいで、ヒディングと比較するとどうなのだろうという読者の質問。ヒディングはいま一番高い報酬をもらっている監督で、公式的にはその金額は年間2百万ユーロと言われている。彼の同僚でグルジアやカザフスタンで監督をしている人たちはたぶん百万ユーロをもらっているだろう。シュタンゲがいくらもらっているかはしらないが、ヒディングほどではないと思われる。

どうも好きになれないんだよなあ。ヒディングという奴。

ポロニウムと大英帝国

「真実の瞬間」の作家アンドレイ・カラウロフは独自の調査をし、リトビネンコは、ロンドンで毒ガス爆弾をつくっている途中に死んだという説を発表した。この中から抜粋で紹介する。

「論拠と事実」はこのリトビネンコ事件の犯人は、イギリスに亡命しているベゾフスキイであるという説に立っているように思える。林さんの「プーチン政権の闇―チェチェン戦争/独裁/要人暗殺」に書かれたようにロシアマスコミは、政権側の意のままになっているということなのだろうか。

ロンドンの寡占支配2

論拠と事実の特派員は、ロンドンでアブラモビッチの邸宅を購入するという名目で取材をし、その仕組みについて調べた。

 

2007年8月34号

泣くなよ、泣いたらお前を笑うぞ

ヤルタで開催された第4回国際ユーモア・エストラーダフェスティバルで、「イオシフ・コブゾンのマイク」というユーモアたっぷりの記念碑が除幕された。フェスティバルのスポンサーはロシア鉄道。アメリカ、アルゼンチン、スイス、イスラエル、ドイツなど海外からも参加。賞をとったのは、ロシアとウクライナ。キエフの「レディーエンドジェントルマン」とピョートル・ヴィンスとドミトリー・ニクーリン。その他のジャンルでは、ペテルプルグの「リツェジェイ・アカデミー」(オリジナル部門)、キエフのショーシアター「ブラックマン&ホワイトマン」とサラトフのドミトリー・カリーニン(音楽部門)。グランプリは、ウクライナのハリツィススカから来たサーカスグループ「クークル」が獲った。

こうしたフェスティバルがあることは初めて知った。気になるのはグランプリをとったサーカスグループ。どんなショーをしているのだろう。ミミクリーチではないがこういうジャンルは、やはりウクライナが強いのかもしれない。

チンパンジーショー

公演案内。モスクワのイリュージョン劇場でロシア初公演。チンパンジーのショーとイリュージョンが合体。

気になったので、サイトを調べてみた。チンパンジーショー自体はそんなすごそうではなかった。それより検索過程で見つかった、「猿の惑星」というショーがあることにびっくり。いろいろあるもんである。

 

2007年8月35号

ミハルコフの帰還

8月29日から始まるベネチア映画祭に、1991年「ウルガ」でグランプリをとったミハルコフが、「12」の作品をもって参加する。この作品は、アメリカ映画「12人の怒れる男たち」のリメイクである。

ミハルコフの公式参加はかなり期待されていたとがわかる。

 

2007年9月36号

イシコフ・コブゾン「国が私たちを愛し、守ってくれるのをいつ見ることができるのか」

9月11日に70才を迎えるコブゾンと、国際ユーモア・エストラーダフェスティバルが開かれていたヤルタでインタビュー。ただインタビューの内容は、ユーモアについてではなく、深刻な問題、ロシアの現状について。

マフィアの大物に、こうしてロシアについて語らせるということ自体、政権側についているマスコミのいまを感じてしまう。

 

2007年9月37号

30人のアナスターシャ

およそ90年間人々は、殺されたツァーリの娘アナスターシャの運命について興奮してきた。おそらく30人をくだらない人たちがアナスターシャを名乗った。ここではこのアナスターシャの運命について追う。最近明らかになった説では、アナスターシャは半世紀以上牢獄に閉じ込められ、1971年に亡くなったというのがある。

ほんとうにロシア人はこのネタがお好きなようである。今年になってこれが2回目である。

ベネチア映画祭の勝利者ミハルコフ

ベネチア映画祭で二度目の金獅子を手にしたミハルコフのインタビュー。ただ場所は、現在撮影が行われている「太陽に灼かれて2」の現場ゴロハベッツだった。 最近の世界の映画状況について、また最新作の「12」について語る。「12」は、ロシアにとって深刻な問題になっているチェチェン紛争についても触れている。

日本の新聞で見る限り、ミハルコフの受賞は、北野タケシの監督バンザイ賞のような名誉賞のような感じだと思ったのだが。

イザドラ・ダンカン「脱衣所での愛」

80年前の9月14日イザドラ・ダンカンは亡くなった。彼女のロシアでのラブロマンスについて、エセーニン文化センターのディレクターで、俳優のセルゲイ・ニコネンコが語る。 最初は演出家のスタニスラフスキイにぞっこんだったこと。またエセーニンは、彼女の中に、自分と同じものを見ていたことなどが語られる。

ダンカンが、スタニスラフスキイにかなり迫っていたというのは知らなかった。彼女は自分のショーにスタニスラフスキイを誘う時、「あなたのために裸で踊るわ」と言ったそうだが、この時スタニスラフスキイは、「ありがとう、なら奥さんと一緒に見に行くよ」と答えたそうである。見事な切り返しである。

ベネチア2007「クスクスかウォッカか?」

べネチア映画祭はロシア映画界にとっては、思いもかけない、名誉あるフィナーレで幕を閉じた。 ミハルコフの「12」の上映が終わった時、場内は喝采がなりやむことがなかった。翌日の新聞でも絶賛された。金獅子賞を与えてもいいという声もあったが、今回は「特別獅子賞」を受賞することになった。「金獅子賞」は中国映画に与えられた。

やはり日本とは受け取られ方が違うような気がする。

 

2007年9月38号

我等のポップ街のもやい杭

「論拠と事実」の音楽担当編集委員が、見聞したアーチストたちの面白いエピソード。DDTのコンサートのあとに、楽屋に酔っぱらってやってきた俳優のシェフリンとシェフチクのやりとりなどが紹介される。

DDTはクラブでも公演するのか、と驚く。というか見に行きたい。

ロストロポービッチの宝物が大衆へ?

先頃亡くなったロストロポービッチが蒐集したロシアアートのコレクションのうち300〜400点が、ロンドンでオークションにかけられるとイギリスの新聞が報道、話題になっている。

何故なのかについてはまだ明らかにされていない。まだ噂話程度なのかもしれない。

「モンゴル 第一部」

映画案内。セルゲイ・ボドロフ監督のこの映画は、ロシア・ドイツ・ガサフが協力して制作された。ジンギスハーンの伝記映画。1500万ユーロの制作費。

カザフで「カチェーブニク(ノマド)」をつくったボドロフがまた遊牧民をテーマにした映画を撮るというのが気になる。

 

2007年9月39号

12人の良心の人質たち

9月20日に先頃ベネチア映画祭で金獅子賞をとったミハルコフの「12」が公開される。 自分の養父であるロシア人将校を殺した罪に問われたチェチェンの若者に対して12人の陪審員が判決を下すことになる。11人は証拠から見て、この若者の終身刑が適当という判断をもつが、一人だけがこれに対して疑いをもつことになる。

かなり重いテーマであることがわかる。日本では配給されるのだろうか?

子供たちの法律は守られていない

子供たちに対する犯罪について報じた37号の記事を見て、多くの読者から何百という投書が寄せられた。ここではこうした投書の一部を紹介。さらに情報を求めるアンケートも。

以前少年・少女に対しての犯罪についての記事をこの欄でスクラップしたことがあるが、ちょっとこうした犯罪の多さは尋常ではない。もっと大きく取り上げられるべき問題であると思う。


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