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【連載】モスクワスクラップ帳

最終回

 前々回にもご案内しましたように、いろいろ事情があり、いままで定期購読していた『論拠と事実』をやめることにしました。そのためにこの連載もこれが最終回になります。ネットでも新聞などは講読できるので、またいつの日か「新・モスクワスクラップ」として再開できればと思っています。

2008年3月の『論拠と事実』から

2008年3月10号
 ヴャチェスラフ・ザイーツェフ 『美しくなりたい? 働きなさい』
 何故ミハルコフはオスカーがとれなかったのか
2008年3月11号
 ボリスは女優をダメにする
2008年3月12号
 カルテットTの無批判な日々
 ふたりの主人につかえるアルレッキーノ
2008年3月13号
 何故私たちはキューバを失ったのか
 ロマンなしの氷の上のオクサーナ・トムニーナ
 サーカス場のスターたちは――虎の口のなかへ


 

2008年3月10号

ヴャチェスラフ・ザイーツェフ 『美しくなりたい? 働きなさい』

今年70歳になったザイツェフのインタビュー記事。いまオートクチュールのファッションショーの仕事からは引退している。現在のファッション界は、あまりにもビジネスに走っている。演劇やショーのでの仕事についても振り返る。フォーキンとの仕事では、衣装やデザインだけでなく、演出にかかわる仕事もさせてもらった。その意味では、「フィガロの結婚」の初日は生涯忘れることができないだろう。

ザイツェフは、ソ連解体後のロシアを代表する文化人だったといえる。ここでも語っているように、芝居の仕事もずいぶんしていた。写真も掲載されているが、70歳とは思えない若さを保っている。

何故ミハルコフはオスカーがとれなかったのか

読者からの質問。ミハルコフはじめロシア映画がいくつか候補になっていたが、結局賞をとれなかったのは、政治の世界でのロシアに対する反発なのか、それともロシア映画のレベルが低いのか。これに対して、映画評論家は、これを真っ向から否定。ミハルコフの今回の「12」は高い評価を得ているし、レベルが低いわけでなく、過去のオスカーでもいくつか賞をとっているので政治的な問題もない。

ほんとうにこういうひがみ根性としかいいようがない、阿呆臭い質問が多い。ただこれが掲載されるということは、これがかなりの部分読者を代表する意見だからなのだろう。

 

2008年3月11号

ボリスは女優をダメにする

ククラーチョフの猫劇場の話題。春になり発情期を迎えた劇場の人気スターの猫のボリスが、厳重に雄と牝を分けていた部屋に忍び入り、劇場の女優猫を20匹以上妊娠させてしまった。

なんともほのぼのとした話題だが、管理体制が甘いというよりも、去勢させていないこと自体が凄い!

 

2008年3月12号

カルテットTの無批判な日々

コメディドラマ「選挙の日々」が大ヒット、この成功で6百万ドルを稼いだといわれているレオニッド・バラッツとロスチラフ・ハイトの二人組へのインタビュー。「選挙の日々」撮影のエピソードを中心に。

このグループの名前は、クラウンフェスティバルで賞をとったということで、以前にも聞いたことがある。いわいるクラウンではなさそうだが、コメディー界の第一人者らしい。ちょっと気になる。

ふたりの主人につかえるアルレッキーノ

公演情報案内
「黄金のマスク」フェスティバルに、イタリアのミラノ・ピッコロ座が出演。3月26日マールイ劇場にて。この劇団の公演は何度もあったが、今回は劇団の65周年を記念した公演。

いまから25年以上前になるが、新宿文化センターのこけら落としの公演を見たことが懐かしく思い出される。ソレーリのアルレッキーノの超絶的な演技が忘れられない。先日BSでこの公演を流していた。深夜の放送だったので録画したのだが、あとで見たら最後の10分ぐらいが入っていなかったのでショックを受けてしまった。

 

2008年3月13号

何故私たちはキューバを失ったのか

キューバでの現地レポート。かつてのソ連車「ラダ」に愛着をもつアンヘリットのエピソード。1991年ソ連解体以降ロシアはキューバに対しての経済援助をストップした。さらに2002年にはフルシチョフ時代に建設された電力発電所センターから撤収、関係者は一斉にロシア帰国した。あれだけいたロシア人は島からいなくなり、現在は中国人が勢力を伸ばしている。ロシア語を話すことができる人も減っている。

2年前に来日したキューバサーカスの総裁はロシア語が話せたが、ロシア語を話すのは20年ぶりとか言っていたのを思い出す。

ロマンなしの氷の上のオクサーナ・トムニーナ

スウェーデンで開催されたフィギュアスケートの世界大会で、直前になって出場をとりやめたペアのオクサーナ・トムニーナのインタビュー。出場をとりやめたのはパートナーであるマクシムが昨年暮れに膝の手術をし、その経過がよくなかったのが原因。一シーズンでかかる経費(遠征、振り付け、メディカルトレーナーなどへの支払い)は20万ドルになる。 私生活での恋人と噂されるロマン・コストマロフとの関係についても語る。

フィギュアはお金がかかるというのは聞いていたが、2000万円以上のお金がかかるというのは、やはり大変だな。真央ちゃんがあんだけコマーシャルに出るのも無理ないわけだ。

サーカス場のスターたちは――虎の口のなかへ

まもなくコンペッションの撮影が行われる今年の「サーカスの中のスター」の稽古の進行状況についてのレポート。 女優のイリーナ・ラチナは、虎の調教と空中シフォンに挑む。虎の調教では虎が開けた口に首を突っ込む。歌手のアニータ・ツォイは、ダイエットが要求される演技のため毎朝10キロジョギング。彼女はひとりの肩の上から別の人の肩に乗り移るジャンプをするのだが、練習に落下ケガまでしている。

去年のこの番組を見たが、その規模の大きさに驚いたものである。ロシアではこれと「スターオブアイス」は、大変な人気になっている。いまひとつスターと呼ばれる人たちが、どの程度のスターなのかはわからないのだが、かなり真剣にみんな挑んでいるのは間違いないし、日本のかくし芸とちがって、実際のサーカス場にお客さんを入れてやっているのにも驚かされる。


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