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クマのコスモポリタン紀行

第8回 済州島紀行編 その1

2004年5月19日(水)

 5時半起床、この日虎の夢を見る。森林のなかを静かに虎が歩いていた夢だ。
 2泊3日の旅ということで、リックサックひとつという身軽なもの。YCAT7時発のリムジンに乗って、成田まで。バスのなかで「ゴンザとソウザ」読了。

 8時半すぎに成田着、チェックインも簡単なもの。3万円をウォンに両替。携帯電話を3日間レンタルしておく。出国手続き。カードに記入しなくてもよくなっていたのにちょっとびっくり。免税店でタバコを1カ−トン、缶ビ−ルを買って、喫煙室で一服。家に携帯の番号を知らせる。ハドガ−から電話。いまから名古屋空港を出るという。ハドガ−は、ソウルを経由して、3時ぐらいに済州島に着くことになっている。搭乗してすぐにビ−ルを飲み、離陸前に寝てしまう。朝飯のサ−ビスがはじまるころに目を覚ます。
 朝食をとったあと、持ってきた長谷川濬さんのノ−トを読みはじめる。1960年の8月に書かれたもの。すっかり夢中になる。着陸前に読了。
 まもなく着陸態勢に入りますというアナウンス、窓から外を見ると大きな島が見えてくる。なんとなく胸がときめいてくる。美しい光景だった。

 12時半着陸。入国手続は簡単だったのだが、最後の方にいたので、30分ぐらいかかった。預けた荷物もないので、そのまま到着ロビーへ。1994年・95年と二回にわたってうちが呼んだモンゴルサーカスのメンバーで、現在は済州島のモンゴル馬サーカスのディレクター、ツォグトフーが迎えにきてくれていた。

 ツォグトフー君は、日本公演の時は、俳優の江口洋介に似ていたことから江口君と呼ばれていた。なのでやはり江口君と呼ぶことに。ハドガーがプロデュースしたモンゴルサーカスのメンバーとして長島温泉に出演していた時、会ったこと、それが今回の旅のプロローグだった。長島温泉で、江口君は、今回の公演に参加したのは、大島さんに会って、いま自分が済州島で馬サーカスをやっていることを知ってもらいたかったからだと言っていた。馬のショーは大好きなのだが、検疫の問題があるので、難しいと言ったら、そうじゃない、自分たちはその土地に住んでいる馬を使ってショーをしているという。その話に興味をもったのが、済州島に来ようと思ったそもそものきっかけだった。

 江口君は、一生懸命ロシア語をつかって、よくここまできてくれましたと歓迎してくれた。ハドガーが到着するまではまだ2時間あったので、まずはお茶を飲もうということに。こっちは今日2回も食事をとっているからおなかがいっぱいだったのだが、韓国名物巻き寿司とコーヒーを頼んでくれた。ほんとうにたどたどしいロシア語で、話し合う。まだ時間があるからサウナへ行こうという。空港の外に出ると、もっと暑いのかと思ったが、それほどでもない。日本を出たときと同じぐらいの気温だった。江口君の運転する車に乗って、空港から10分ぐらいのところにあったサウナへ。韓国に来て最初にしたことがサウナに入ることとは・・・・。ただなかなか気持ち良かった。もっぱら湯船につかっていたのだが、穴のあるところに行ってみろと言われ、背中をつけようとしたら、いきなりピリピリと電流らしきものが流れてきたのに、びっくり。あれはなんだったのだろう。

 そろそろハドガーが着くころだというので、また空港に。国内線のロビーで待っていたら、なかなか出てこない。しばらくして江口の携帯に電話、空港内を見回したら、近くの公衆電話でハドガーが電話しているのが目に入る。ハドガーと会うのも、久しぶり、長島温泉以来だ。飯を食べようということで、車に乗り込む。ハドガーがいるので言葉の問題はなくなる。江口君が、大島さんは忙しい人なのに、ほんとうに済州島まで来てくれて、ほんとうに感謝しますと繰り返してお礼を言っていた。
 新チェジュのレストランで昼食、チゲ鍋を食べる。それからハドガーがみんなの差し入れを買うためにスーパーに寄る。入り口で大きな荷物を持ち込んでは行けないということで、ハドガーの荷物をコインロッカーに預ける。おかしかったのは、ハドガーが買い込んだビールとウォッカの量が多すぎるということで、パスポートを見せろということになったこと。あれは何故だったのだろう。
 それからいま馬サーカスを経営する社長さんが建設を進めているサーカス場に立ち寄って、馬サーカスのあるグリーンリゾートへ。なんでもこのサーカス場、2000人を収容し、天井高も25メートルもあるという本格的なもの。なんでまたこんな立派なサーカス場をつくることになったのか、明日社長さんに会って話を聞くことにする。なんとなく今回の旅が、楽しいものになるような予感。

モンゴル馬サーカスのメンバーと共に.(クリックで拡大) ハイウェーを20分ぐらい走ったところに、馬のサーカス場があった。小高い高原のなかに、ドーム状の建物、そして乗馬教室、レストラン、ホテルが立ち並んでいる。馬のサーカス場の前の駐車場は、観光バスでいっぱいになっている。公演は10時半、14時半、16時半、17時半の4回ある。今日は最後の4回目のショーを見ることに。
 観客席はほぼ満員。前半40分は中国雑技、10人ぐらいのメンバー。おかしかったのは、ひとりの芸人さんが日本のBzの曲をつかっていたこと。前のほうに座っている女子中学生か高校生の団体が、キャーキャーとすごい歓声を送っている。雑技が終わって、MCのお姉さんがリングに登場して、いよいよ馬のサーカスの開始。(この内容については、クマの観覧雑記帳を参照のこと)
少年が馬上で描いた馬の絵(クリックで拡大) イヤイヤ凄かった。ここまで見に来た甲斐があったというものだ。久しぶりにぞくぞくした。隣で見ていたハドガーは涙が出てきましたと言っていた。
 公演が終わって、外に出ると、さっき歓声をあげていた女の子たちが、ジギドのメンバーと写真をとったりして、またわあわあ騒いでいる。若い子が来るときはいつもこうなるという。
 敷地内にあるレストランへ。ここで出演者は、三回食事をとる。みんなにまじって食事。みんなは定食もののようだったが、江口君がわざわざ焼き肉を頼んでくれる。出演していたモンゴルの子供たちのうち、一番やんちゃそうなのが、自分のところにやってきて、さかんになんか聞いてくる。モンゴルの子供たちはほんとうに人なつっこい。ハドガーに何を言っていると聞いたら、お前は韓国人か聞いていたらしい。ビールとここの地焼酎ハルを飲みながら、焼き肉をつつく。しかしこの焼き肉、なかなかすごい。おばちゃんが凍った肉をそのまんまドーンとテーブルに置いていく。韓国のおばちゃんという感じだ。
 結構飲んで、食べた。みんなが帰っておばちゃんが、早く帰れといわんばかりに、片づけていくので、店を出ることに。
 子供たちが寄宿している離れに寄る。みんな子供たちは、ローラースケートを履いて遊んでいる。楽しそうだ。

 それからホテルにチェックイン。いまはオフシーズンということで、宿泊するのは自分とハドガーのふたりだけのようだ。ハドガーが買ってきたビールとウォッカでロビーで飲み直し。男の出演者がみんな集まってくる。なかにブリヤードにいたことがあるというパフォーマーがふたりいて、ロシア語ができるというので、ハドガーも少し楽になったみたいだ。
 それからはまあよく飲んだ。今日のショーの感想を言っているうちに、乾杯の音頭をとれといわれて、今日見たショーへの感動をこめて、スピーチを言ったら、みんな大喜び。それまでは良かったのだが、こんないいスピーチをした人間は、三杯グラスを空けなくてはいけないと言われ、調子に乗ってそれをしてしまったもんだから、あとはもう大変。記憶がほとんど失われてしまった。
 ハドガーたちは朝の4時まで、自分は1時まで飲んでいたという。


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