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週刊デラシネ通信 今週のトピックス(2000.12.02)
レザーノフの「日本滞在日記」が、2000年文庫本ベスト3に選ばれてしまった

岩波文庫「日本滞在日記」 年末になると今年の成果がいろいろなメディアで発表されます。雑誌の「リテレール」でも別冊「ことし読む本 いち押しガイド2001」のなかで、恒例の各界の読書家が選んだ2000年単行本・文庫本ベスト3を発表しています。このなかで現代詩作家の荒川洋治氏が、なんとレザーノフの「日本滞在日記」をとりあげてくれたのです。
今まで5冊の本を出してきましたが、このようなかたちでベスト3に選ばれたのは初めて、嬉しいことです。
 荒川氏は、この本が出た時にも、TBSのラジオ番組で紹介してくれました(私は残念ながら、これを聞いていません)。こういうかたちで認めていただくと、訳して良かったと思います。
 荒川氏が、本書に触れた部分を引用させていただきます。

「文庫では、レザーノフ『日本滞在日記一八〇四−ー八〇五』。一八〇四年、鎖国日本へ、ロシアから全権大使レザーノフが通商を求めて長崎に。ペリー来航の半世紀前である。せっかく来たのに長崎で半年待たされた。奉行は、江戸に問い合わせないと自分では判断できない。レザーノフは「軟禁」され、ついに追いかえされる。だが彼はこの間、日本の庶民や通詞(日本人通訳)の心にふれる。通詞たちは(レザーノフが一人のときに来て)私を真の友人だと考えてください、手紙を書くときは十分気をつけてくださいなどと、耳打ち。ある通詞は言う。「あなたが、自由を束縛されているのは、一時的なことだけですが、私たちは永遠にそれに堪えていかなくてはならないのです」。
「私たちの父や祖父たちは、米を食べるだけを楽しみに生活を送っていたのです。そして私たちや私たちの子どもたちも同じようにこんな生活を送っていかねばならないのです」。
 昔の人とは思えないこの「発言」は三四〇頁だが、実はどの頁にも「日本」のかげに隠れた日本人の姿が見える。さらにおもしろいのは巻末掲載の、ロシア当局がレザーノフに与えた指令書。日本でこうされたら、こうせよ、こう言えなどと、その指示のこまかいこと、こまやかなこと。何かを企画したり考えるとき、相手や知らない人の立場にたって、現代の人間もこのくらいのことを事前に考えなくてはならないのだ。その意味でも「重要な文書」である。とても、ためになる。ぽくはこういうふうに気を回す人が、とても好き。」
   「リテレール」別冊14「ことし読む本 いち押しガイド2001」
   2000年12月発行
   出版社 メタローグ  本体1500円

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