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2016.10.24 / 更新2018.09.03

第41回~第50回 桑野塾の開催概要と内容

第41回~第50回 桑野塾の開催概要と内容です。

  • 第41回 ●「南ロシアのステップに魅了されて・・・」鴨川 和子
  • 第42回 ●「ふりかえってみたアストラハンの日々」柴田 明子
         ●「サーカスフォーラムに参加して」大島 幹雄
  • 番外編 ●「NY暮らしで見える「ロシアの光と影」」武隈 喜一
  • 第43回 ●「ほとんど誰も観られなかった《マリインスキー劇場初来日100周年展》」沼辺 信一
  • 第44回 ●「ロシア・モダニズム音楽におけるジャポニスム ~ストラヴィンスキーとルリエーの和歌歌曲を例に~」高橋 健一郎
         ●「バレエ《魔法の鏡》と1900年代ロシア帝室劇場における変化」平野 恵美子
  • 第45回 ●「オデッサの春――ユモリーナと「コメディアーダ」」大島 幹雄
  • 第46回 『ロシア革命100年と対峙して』
         ●「スターリンは優秀な指導者か?非道な独裁者か?――モスクワのロシア国立グラーグ歴史博物館とのやりとり
          及びニュースから見えてくる過去との向き合い方」エカテリーナ・コムコーヴァ
         ●「身近なロシア・ソ連の亡命者たちの運命」稲田 明子
  • 第47回 『桑野塾×サーカス学ゼミ』
         ●「〈サーカス学〉のひとつの試み」桑野 隆
         【特別上映】秘蔵サーカスドキュメンタリー映画[解説:上島敏昭+大島幹雄 (サーカス学ゼミ)]
  • 第48回 ●「石坂幸子とモスクワ放送ハバロフスク放送局―元NHK女子アナウンサーが見た戦後直後のモスクワ放送日本語番組」島田 顕
         ●「いわば、ポスト・ソヴィエト的芸術左翼戦線」八木 君人
  • 第49回 『エイゼンシュテイン生誕120年』
         ●「エイゼンシュテインと/の「対角線の科学」」井上 徹
         ●「剥離するイメージ――エイゼンシュテインのモンタージュ理論を再考する」畠山 宗明
  • 第50回『シャガール!クレズマー!チンドン!』
        ●「シャガールの聴いた音――クレズマーとイディッシュ演劇」武隈 喜一
        ●「チンドン・クレズマー 交流見聞録」大熊 ワタル・こぐれ みわぞう

第41回
●「南ロシアのステップに魅了されて・・・」鴨川 和子

  • 2016年11月19日(土) 午後3時~6時
  • 早稲田キャンパス16号館820号室

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●「南ロシアのステップに魅了されて・・・」鴨川 和子

南ロシアの土中に眠るものたち

クルガンのステップ

クルガンのステップ

静かなるドンの恋の始まり

静かなるドンの恋の始まり

トロゴンテリーゾウ(マンモス)の全身骨格

トロゴンテリーゾウ(マンモス)の
全身骨格

プラハのフィアラ家

発掘風景

バーツラフ・フィアラ

発掘された装身具

プラハのフィアラ家

馬との対面

 黒海・アゾフ海・カスピ海に接する南ロシアのフィールドワークに20年以上参加してきた。アゾフを起点とし1994年からほぼ毎年、南ロシアでロシア連邦科学アカデミー南方科学センター、ロストフ大学、各地の博物館の考古学者、古生物学者らと生活を共にしながら、現地での発掘にも参加。また古生物、考古学の出土品が展示・所蔵されている各地の博物館をつぶさに訪ねてきた。
 貴重な写真を紹介しながら、黒海北岸に点在する古代ギリシアの植民都市址、そこからの出土品、スキタイ・サルマタイなどの騎馬民族の遺宝、また南ロシアの歴史・文化・生活を紹介する。

 南ロシアはチェーホフ、ショーロホフの生地のあるところ。1935年に一人のヤポンカ(日本人女性)が南ロシアのコサックの地を訪れ、コサックの民族祭り、狩りに参加している。その名はショーロホフと交流のあった阿部よしゑさん。――日本でもロシア国内でも南ロシアを長年、広範囲に亘っての取材はいまだにない。

 

●鴨川 和子(かもがわ かずこ) 
東京浅草生まれ。
1972年モスクワ民族友好大学卒業後、ノーボスチ通信社東京支局記者。1997年民族友好大学研究生。
1980‐85年まで大学院生としてソ連邦科学アカデミー民族学研究所でP・プチコフ教授、
S・ワインシュテイン教授に師事。1985年同研究所で学位(D.ph〉取得。
専門分野―ロシア少数民族、歴史、文化など。
新潟ロシア村・マールイ美術館館長、ユーラシア学術・文化研究所所長、現在フリー。
著書:『ソ連の女たち』(すずさわ書店)、
『モスクワ暮らし‐市民から見たペレストロイカ』(朝日新聞社)、
『トゥワー民族』(晩聲社)、
『南ロシア 草原・古墳の神秘』(雄山閣)など。
共著:『世界の民―光と影』(明石書店)など。

 

鴨川和子「南ロシア―草原(ステップ)・古墳(クルガン)の神秘」
鴨川和子著「南ロシア―草原・古墳の神秘」
(Amazonへのリンク)

第42回 
●「ふりかえってみたアストラハンの日々」柴田 明子
●「サーカスフォーラムに参加して」大島 幹雄

  • 2017年1月28日(土) 午後3時~6時
  • 早稲田キャンパス16号館820号室

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●「ふりかえってみたアストラハンの日々」柴田 明子

アストラハン・・・って、どこ?

アストラハンの街角

アストラハンの街角

 ロシア語もできず、アストラハンという地名すら知らぬまま始まった2年間のロシア暮らし。大学予備学部でのスパルタ授業、日本語を学ぶ人たちとの出会い、スーパーのおばさんや大学寮のデジュールナヤとの交流など、一地方都市アストラハンでの生活やその時々の喜怒哀楽、思ったことなどごく私的な体験談。

 

●柴田 明子(しばた あきこ) 
元書籍編集者。
三修社編集部などに勤務した後、日本語を教えることになった夫に同行し、
2012年8月から2104年6月までアストラハンに滞在。

●「サーカスフォーラムに参加して」大島 幹雄

サーカス! サーカス! サーカス!

サーカスフォーラム展パンフレット

サーカスフォーラム展パンフレット

 2014年に引き続き2016年もサンクトペテルブルグ市で開催された文化フォーラムの分科会「サーカスフォーラム」に招待され、11月30日から12月5日までサンクトペテルブルグに滞在しました。
 サーカスフォーラムは「サーカス産業」と「ジャグリング」のふたつのセクションにわかれていましたが、私はジャグリングセクションのメンバーとして参加しました。
 ここでの3日間の講演やワークショップについて報告します。

 

●大島 幹雄(おおしま みきお) 
サーカスプロデューサー。著書に『サーカスと革命』(水声社)、
『明治のサーカス芸人はなぜロシアに消えたのか』(祥伝社)、
『サーカス学誕生』(せりか書房)など。

番外編 
●「NY暮らしで見える「ロシアの光と影」」武隈 喜一

  • 2017年4月1日(土) 午後3時~5時50分
  • 早稲田「金の鈴」(今回は、うどんのおいしい飲食店を借りて開催します!)

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今回は番外編です!

 4月の桑野塾は、桑野塾立ち上げメンバーのひとり、武隈喜一さんのニューヨークレポートです。
武隈さんは昨年夏からニューヨークに転勤になりました。仕事の合間をぬって、文化の坩堝ニューヨークで、演劇、展覧会、音楽を貪欲に見て回っています。その臨場感あふれるレポートを「あてらな通信」としてメールで配信されています。

 例年ですと3月・4月は大学が学年末新年度にあたり教室がとれないために、お休みすることが多かったのですが、今回は武隈さんが3月末に一時帰国すると聞き、こんなチャンスはないということで急遽決まりました。
ただし、大学内の教室が使えないため、いつも懇親会の会場にしている「金の鈴」に無理やりお願いして、ここを会場としても使わせていただくことになりました。

 いつものように午後3時から開始し、お店の営業がはじまる17時前に終了という特別バージョンです。
もちろんこの間は報告のみで、飲食はつきません。
報告が終わった17時以降に、懇親会ということになります。

 今回はいつもの会場とはちがいますので、席に限りがあります。そのため今回だけは参加ご希望の方は、下記までメールでお申し込みください。メールには「桑野塾参加希望」の旨と、懇親会の出欠の有無をお書きください。

●「NY暮らしで見える「ロシアの光と影」」武隈 喜一

ジャーナリストが見たリアルな“アメリカ”

MoMA「A Revolutionary Impulse: The Rise of the Russian Avant-Garde」展より

MoMA「A Revolutionary Impulse:
The Rise of the Russian Avant-Garde」展より

トランプーチン新聞

トランプーチン新聞

ブライトンビーチの看板り

ブライトンビーチの看板

ポグロム、革命、ホロコーストを逃れたロシア語移民が、
ニューヨークの文化を作ってきた。
MoMAのアヴァンギャルド展からトランプ大統領まで、
ロシアとアメリカを語る。

 

●武隈 喜一(たけくま きいち)
1957年東京生まれ。上智大学外国語学部ロシア語学科、東京大学文学部露文科卒業。
出版社、通信社等を経て、1994年から1999年テレビ朝日モスクワ支局長。
2016年7月からニューヨーク勤務。

編訳『ロシア・アヴァンギャルドⅡ 演劇の十月』(国書刊行会、1988年)、
『ロシア・アヴァンギャルドⅠ 未来派の実験』(同、1989年、共に共編)、
著書『黒いロシア 白いロシア――アヴァンギャルドの記憶』(水声社、2015年)など。

ニューヨークの文化と政治と生活を「あてらな通信 ニューヨーク篇」、
「メディアの現在」としてメール配信を続ける。

第43回 
●「ほとんど誰も観られなかった《マリインスキー劇場初来日100周年展》」沼辺 信一

  • 2017年5月20日(土) 午後3時~5時50分
  • 早稲田キャンパス16号館820号室

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●「ほとんど誰も観られなかった《マリインスキー劇場初来日100周年展》」沼辺 信一

2016年12月 ロシア・バレエ 幻の展覧会

来日したバレリーナ、エレーナ・スミルノワ アレクサンドル・ゴロヴィ―ン作の肖像画(1910)

来日したバレリーナ、エレーナ・スミルノワ
アレクサンドル・ゴロヴィ―ン作の肖像画(1910)

ロシア大使館での展覧会の開催を報じるNHKのニュース映像(2016年12月26日)

ロシア大使館での展覧会の開催を報じる
NHKのニュース映像(2016年12月26日)

 

1916(大正5)年6月16日から三日間、東京の帝国劇場で初の「露國舞踊」公演が催されました。出演者はエレーナ・スミルノワ、ボリス・ロマノフ、オリガ・オブラコワの三名。ピアノ伴奏による小規模な催しでしたが、彼らはペテルブルグの帝室劇場(マリインスキー劇場)バレエ団の正団員であり、このときチャイコフスキーの《白鳥の湖》の一部(「二人舞踏」すなわちパ・ド・ドゥー)や、サン=サーンスの《瀕死の白鳥》などが初めて踊られた意義は、日本バレエ史に特筆すべきものといえましょう。

 昨年の12月26日、この初来日公演100周年を記念する重要な展覧会「純粋なる芸術」が東京・狸穴のロシア大使館で開催されました。新発見の史料をふんだんに用いた展示は、マリインスキー劇場の現総裁・芸術監督ワレリー・ゲルギエフの肝煎りでまずペテルブルグ、次いでウラジオストクで公開され、最終的に東京へ巡回したものです。当日は数十名のバレエ関係者を招いた内覧会が開かれ、その様子はNHKのTVニュースでも報道されました。にもかかわらず、その後ロシア大使館は「ここは美術館ではない」との理由から展示を一般公開せず、観覧依頼や問い合わせにも応じなかったため、この貴重な展覧会は、バレエ史の専門家を含め、ほとんど誰の目にも触れずに幻のまま幕を閉じました。残念というほかありません。

 そこで今回の桑野塾では、ロシア大使館側とかけあって、この展覧会を30分間だけ観る機会を得たという沼辺信一氏に、展示内容とそこから明らかになった新事実、さらには来日公演を観た100年前の日本人たち(大田黒元雄、山田耕筰、石井漠、与謝野晶子、有島武郎ら)の反応について、詳しく報告してもらいます。

 

●沼辺信一(ぬまべ しんいち):編集者・研究家。
ロシア絵本の伝播、日本人とバレエ・リュス、
プロコフィエフの日本滞在など、越境する20世紀芸術史を探索。

第44回 
●「ロシア・モダニズム音楽におけるジャポニスム
  ~ストラヴィンスキーとルリエーの和歌歌曲を例に~」高橋 健一郎
●「バレエ《魔法の鏡》と1900年代ロシア帝室劇場における変化」平野 恵美子

  • 2017年6月17日(土) 午後3時~5時50分
  • 早稲田キャンパス16号館820号室

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●「ロシア・モダニズム音楽におけるジャポニスム~ストラヴィンスキーとルリエーの和歌歌曲を例に~」高橋 健一郎

ロシアで歌曲になった日本の和歌

イーゴリ・ストラヴィンスキー

イーゴリ・ストラヴィンスキー

アルトゥール・ルリエー

アルトゥール・ルリエー

 

 1910年代から20年代にかけてロシアでは和歌のロシア語訳に多くの歌曲が書かれた。その中からイーゴリ・ストラヴィンスキーの《3つの日本の抒情歌》(1913年)とアルトゥール・ルリエーの《日本組曲》(1915年)を取り上げる。
 二人の作曲家は伝統的な西欧音楽の基本である構築的な調性音楽を否定し、新しい音楽を模索したが、興味深いことに、その際に二人とも日本や東洋の芸術に目を向け、共にその中の「次元」や「遠近法」に着目した。しかし、これら二つの組曲ではその志向性が正反対とも言えるほど対照的であった。
 それらの考察を通して、20世紀初頭のロシアのモダニズム音楽にジャポニスムが与えた影響を考える。

 

●高橋 健一郎(たかはし けんいちろう):
札幌大学地域共創学群教授。
専門はロシアの言語と音楽。
著書に『アレンスキー 忘れられた天才作曲家』(東洋書店)。
日本アレンスキー協会副会長。

●「バレエ《魔法の鏡》と1900年代ロシア帝室劇場における変化」平野 恵美子

偉大なる振付家プティパの“失敗作”とは

『帝室劇場年鑑』に掲載された初演時のスチール写真(「女王」)

『帝室劇場年鑑』に掲載された
初演時のスチール写真(「女王」)

A・ゴロヴィーンによる舞台美術のエスキース(1903)

A・ゴロヴィーンによる舞台美術のエスキース(1903)

上2点とも A・ゴロヴィーンによる
舞台美術のエスキース(1903)

 

 マリウス・プティパ(1818-1910)は、今日のクラシック・バレエを確立した最も偉大な振付家の1人である。彼が最後に振付けたバレエ《魔法の鏡》(1903)は、30年以上の長きに渡り、ロシア帝室劇場のバレエ・マスターとして君臨したプティパの記念公演のために鳴り物入りで上演されたが、「大失敗」に終わり、プティパの事実上の引退を決定づけたとされる。《魔法の鏡》は「失敗作」として、これまであまり注意を払われて来なかったし、作品自体も失われてしまった。
 本報告では、舞踊学的な分析というよりも、この作品の「失敗」が、1900年代のロシア帝室劇場とバレエ史においてどのような意味を持つのか、美術や音楽など多方面から考察する。

 

●平野 恵美子(ひらの えみこ):
東京大学助教。
帝室劇場やバレエ・リュスなどを中心した芸術文化研究が主なテーマ。
共訳『ラフマニノフの想い出』(水声社、2017年7月刊行予定)

第45回 
●「オデッサの春――ユモリーナと「コメディアーダ」」大島 幹雄

  • 2017年8月26日(土) 午後3時~5時50分
  • 早稲田キャンパス16号館820号室

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●「オデッサの春――ユモリーナと「コメディアーダ」」大島 幹雄

世界の道化師の祭典!

コメディアーダのパレード

コメディアーダのパレード

参加者の集合写真

参加者の集合写真

 

 3月30日から4月2日まで開催された国際クウラン・マイムフェスティバル「コメディアーダ」の審査員として参加するためにウクライナの黒海に面した港町オデッサを訪れました。
 ロシアとの戦争が続く中、ユーモアの街として、エイプリルフールの4月1日を祝日として街中みんなで愚者(フール)に扮して祝う街オデッサに最も似合うフェスティバルでした。
今回は4日間わたって開催されたこのフェスティバルの様子を、報告いたします。
 最近参加したフェスティバルでは文句なしに楽しめたこのフェスティバルを、グランプリを獲得したハンガリーのクラウン、特別ゲストのスペインのレオ・バッシー、主催者のマスキのショーなどの映像も見ていただきながら、実感していただければと思っています。

 

●大島 幹雄(おおしま みきお)
サーカスプロデューサー。著書に『サーカスと革命』(水声社)、
『明治のサーカス芸人はなぜロシアに消えたのか』(祥伝社)、
『サーカス学誕生』(せりか書房)など。

第46回 
『ロシア革命100年と対峙して』
●「スターリンは優秀な指導者か?非道な独裁者か?――モスクワのロシア国立グラーグ歴史博物館とのやりとり及びニュースから見えてくる過去との向き合い方」エカテリーナ・コムコーヴァ
●「身近なロシア・ソ連の亡命者たちの運命」稲田 明子

  • 2017年10月28日(土) 午後3時~5時50分
  • 早稲田キャンパス16号館820号室

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1917年のロシア革命はソヴィエト連邦国家を誕生させ、その後もはかり知れない人々の生命を奪い運命を狂わせました。世界を二分し遠大な理想を掲げながらスターリン体制は変わることなく鉄のカーテンとグラーグ(強制労働収容所)制度を続け、ソ連邦はあえなく70年にして崩壊しました。
こうしたソ連の100年を、ソ連崩壊後日本に留学し現在東京外国語大学などでロシア語非常勤講師をしているエカテリーナ・コムコーヴァと、稀有なソ連体験をもつ勝野金政の遺族・稲田明子がそれぞれの関わりのなかからふりかえります。

●「スターリンは優秀な指導者か?非道な独裁者か?
  ――モスクワのロシア国立グラーグ歴史博物館とのやりとり及びニュースから見えてくる過去との向き合い方」
  エカテリーナ・コムコーヴァ(関東学院大学・東京外語大学ロシア語非常勤講師)

グラーグ歴史博物館(モスクワ)

グラーグ歴史博物館(モスクワ)

グラーグ歴史博物館のプレート

グラーグ歴史博物館のプレート

 

 2001年に設立されたグラーグ歴史博物館の活動を紹介しながら、自分の個人史を通じて現れたスターリンとはなんだったのかをふりかえり、最近のニュースから見えてきたスターリンとロシアの関係もみていきます。

 

●エカテリーナ・コムコーヴァ(Екатерина Комкова)
ロシア国立イルクーツク外国語教育大学日本語学科卒。
1995年から1年間富山大学に留学中に藤井一行教授のもとで
勝野金政のロシア公文書館文書の翻訳にかかわる。
その後NHKロシア語会話に出演するほか、勝野金政遺族と
ソルジェニーツィン記念亡命ロシア人センター、
ロシア国立グラーグ歴史博物館とのコンタクトをコーディネイト。
個人的に勝野金政著『赤露脱出記』ロシア語翻訳に取り組む。

●「身近なロシア・ソ連の亡命者たちの運命」稲田 明子

エリアナ・パヴロバ

エリアナ・パヴロバ

昭和初期 創立直後のパヴロバ・バレエスクール(鎌倉)

昭和初期 創立直後の
パヴロバ・バレエスクール(鎌倉)

コメディアーダのパレード

帰国直後の勝野金政

勝野金政著『凍土地帯―スターリン粛清下での強制収容所体験記』表紙カバー(吾妻書房、1977年刊)

勝野金政著
『凍土地帯―スターリン粛清下での
強制収容所体験記』表紙カバー
(吾妻書房、1977年刊)

 

 靖国の英霊となった亡命ロシア人で日本のバレエの母と称されるエリアナ・パヴロバ。1919年母妹と日本に亡命し、関東大震災被災を乗り越え、日本で最初のバレエスクールを鎌倉に設立し、バレエ界を担う人材を数多く育てました。
 一方、留学先のパリからソ連に亡命し、その後日本に生還・亡命した父・勝野金政。ソ連崩壊後加藤哲郎教授の検証により1989年名誉回復が判明し、新たな展開をもたらしました。2014年モスクワソルジェニーツィン記念亡命ロシア人センターで開催した「没後30年記念展」を機に、このたびグラーグ歴史博物館へ資料・遺品寄贈を終えロシアとの関係修復がすすみ、「ロシア革命100年」を迎えました。
 この100年に貴重な足跡を残したわたくしの身近な日露の若き亡命者たちの数奇な運命を手元の資料から考察します。

 

●稲田 明子(いなだ あきこ)
昭和16年3月勝野金政・光子長女として東京に生まれる。疎開により父の郷里木曽で育つ。
早稲田大学教育学部卒業。結婚し鎌倉に住む。
ソ連崩壊後加藤哲郎、藤井一行教授への父の資料提供に携わる。CD-ROM『勝野金政著作集』藤井一行共編。

第47回
桑野塾×サーカス学ゼミ
●「〈サーカス学〉のひとつの試み」桑野 隆
【特別上映】秘蔵サーカスドキュメンタリー映画[解説:上島敏昭+大島幹雄 (サーカス学ゼミ)]

  • 2018年2月3日(土) 午後3時~5時50分
  • 早稲田キャンパス16号館607号室

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●「〈サーカス学〉のひとつの試み」桑野 隆

サーカスから見える新たな地平!

エクステル「サーカス」

エクステル「サーカス」

剣呑み芸人

剣呑み芸人

第30回(2015年4月)で取りあげたオリガ・ブレニナ=ペトロヴァ『文化空間のなかのサーカス』の翻訳が、ひとまず終わりました。
その結果改めて思うに、本書はまさに「サーカス学」の新たな地平を切り拓く画期的な著書となっています。とりあげているテーマ自体は必ずしも目新しいものではありません。しかし、サーカスを他の文化現象との関係のなかで見ていこうとする著者のアプローチは、解読装置の活かし方の妙も相俟って、サーカスならではの魅力や可能性を次々と掘り出しています。今回の報告では、そうした「発見」を中心に紹介していきたいと思います。
また、本書では絵画や写真、ポスター、文学、映画などから数多くの具体例が引かれており、映画はアニメーションも含めれば100点近くにのぼります。報告では、その辺の画像や動画も随時紹介していきます。

●桑野 隆(くわの たかし)
早稲田大学教育・総合科学学術院(教育学部複合文化学科)教授。
専門は、ロシア文化、表象文化論。

オリガ・ブレニナ=ペトロヴァ著『文化空間のなかのサーカス』表紙 『文化空間のなかのサーカス』
オリガ・ブレニナ=ペトロヴァ著
  目  次
序 サーカスにおけるバランスの力学
第1章 サーカス空間のダイナミズム

 1.1.サーカス――非定住文化
1.2.Vertmen:サーカスの神話学的根源

第2章 人間と動物の共生
 2.1.サーカス芸術における生命中心主義の表象
2.2.サーカスにおける動物演劇化

第3章 アヴァンギャルドとサーカス
 3.1.未来派と転移のファクトゥーラ
3.2.(ポスト)革命期の社会・文化的空間における
「文化の分子」としてのサーカス

第4章 サーカスと権力
 4.1.ソヴィエト・サーカス――脱構築「工場」
4.2.ソヴィエト無声映画におけるニューヒーローの
サーカス曲芸と身体コード
4.3.クレクス、フェクス、ペクス
(フェクスの道化物映画における手品と手品師について)

第5章 飛翔・変容する身体
 5.1.人間砲弾
5.2.イリュージョン・夢幻劇的パントマイムから現代アニメまで
5.3.ロシアの見世物文化における「呑み込み芸人」について

【特別上映】秘蔵サーカスドキュメンタリー映画

解説:上島敏昭+大島幹雄 (サーカス学ゼミ)

 1941年制作というクレジットが入っているソ連のサーカスドキュメンタリー映画(45分)のフィルムが発掘され、昨年から2カ月に一回のペースで開かれているサーカス学ゼミの中で初公開された。
 今回はフィルムを発掘した上島敏昭と、ロシアのサーカス博物館に調査を依頼した大島幹雄の解説付きで上映します。

第48回
●「石坂幸子とモスクワ放送ハバロフスク放送局―元NHK女子アナウンサーが見た戦後直後のモスクワ放送日本語番組」島田 顕
●「いわば、ポスト・ソヴィエト的芸術左翼戦線」八木 君人

  • 2018年4月21日(土) 午後3時~5時50分
  • 早稲田大学 戸山キャンパス33号館231号室

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●「石坂幸子とモスクワ放送ハバロフスク放送局
――元NHK女子アナウンサーが見た戦後直後のモスクワ放送日本語番組」島田 顕

彼女はなぜNHKからモスクワ放送へ行ったのか――

石坂 幸子

石坂 幸子

戦時中に、NHK樺太豊原放送局のアナウンサーを勤めた石坂幸子。
彼女のモスクワ放送ハバロフスク放送局入局の経緯、活動、その後辿った人生を通して、戦後直後のモスクワ放送の実像、そしてその意義を明らかにする。

●島田 顕(しまだ あきら)
1965年横浜市生まれ。
ロシアの声(旧モスクワ放送、現国際情報通信社「ロシア・セヴォードニャ」)
日本語課翻訳員兼アナウンサーを経て、 関東学院大学経済学部講師、博士(社会学)。

●「いわば、ポスト・ソヴィエト的芸術左翼戦線」八木 君人

グローバル資本主義に対抗する運動アート

≪Башня Зонгшпиль≫

≪Башня Зонгшпиль≫

≪Жить долго умереть молодым≫

≪Жить долго умереть молодым≫

≪Нравится Москва≫

≪Нравится Москва≫

 現在、グローバル資本主義に抗って、「社会主義」や「共産主義」をアップ・デートしようという動きは世界各地で見られます。それは、「現存する社会主義」の崩壊から四半世紀を経たロシアでも同様です。
 この報告では、そうした運動の中から、ペテルブルクのグループ "Что делать?" を中心にとりあげ、「芸術の政治化」といえるようなポスト・ソヴィエト的左翼芸術活動を紹介したいと思います。
 また、余力があれば、それら担い手が読み替える、ロシア・アヴァンギャルドのアクチュアリティについても考えてみたいと思います。

●八木 君人(やぎ なおと) 早稲田大学文学学術院准教授

第49回
エイゼンシュテイン生誕120年
●「エイゼンシュテインと/の「対角線の科学」」井上 徹
●「剥離するイメージ――エイゼンシュテインのモンタージュ理論を再考する」畠山 宗明

  • 2018年6月16日(土) 午後3時~5時50分
  • 早稲田大学 戸山キャンパス33号館231号室

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●「エイゼンシュテインと/の「対角線の科学」」井上 徹

おまけ・『戦艦ポチョムキン』のにぎやかな航海

20代のエイゼンシュテイン

20代のエイゼンシュテイン

「戦艦ポチョムキン」より

「戦艦ポチョムキン」より

「戦艦ポチョムキン」より

「戦艦ポチョムキン」より

「メキシコ万歳」より

「メキシコ万歳」より

メキシコでのエイゼンシュテイン

メキシコでのエイゼンシュテイン

 ソ連の映画監督エイゼンシュテインは、今年生誕120年没後70年の節目を迎えています。モンタージュ論をはじめとする理論的著作にも、新たな光があてられ、改めてその真価が問われています。エイゼンシュテインの著作は、一般的な理論書とは違った独特のスタイルで綴られていますが、その意味をロジェ・カイヨワの「対角線の科学」という概念を手がかりに考えてみたいと思います。
 おまけで、無声映画の『戦艦ポチョムキン』には、いくつかの音楽がつけられてきましたが、その聞き比べをしてみたいと思います。

●井上 徹(いのうえ とおる)
1965年東京生まれ。エイゼンシュテイン・シネクラブ代表。映画史・ユーラシア文化研究者。
「ロシア・アニメ映画祭2000」「ロシア・ソビエト映画祭」など、
さまざまな上映の企画・運営にたずさわる。
今年は国立映画アーカイブでの「ロシア・ソビエト映画祭」(7月10日~8月5日)に企画協力。
ロシア・ソビエト映画についての執筆も続けている。
著書に『ロシア・アニメ』(東洋書店)。
共訳書に『エイゼンシュテイン全集』第9巻(キネマ旬報社)ほか。

●「剥離するイメージ――エイゼンシュテインのモンタージュ理論を再考する」畠山 宗明

 エイゼンシュテインのテクストは、時代によって様々に解釈されてきた。しかしエイゼンシュテインの認識の根底には、全てを身体感覚として考察するという前提がある。
 そうした前提に立ったときわかるのは、エイゼンシュテインにとってモンタージュとは、弁証法的な「発展」というよりも、一つの視野の中での知覚的「重なり合い」を意味していたということである。
 この発表ではエイゼンシュテインの様々なコンセプトをこのような知覚論的なアプローチから読み直してみたい。

●畠山 宗明(はたけやま むねあき)
1974年生。聖学院大学人文学部助手。映画研究、表象文化論、エイゼンシュテイン研究。
「レイヤー化するイメージ」(『デジタルの際』共著、聖学院大学出版会、2015年)、
「エイゼンシュテイン――運動とイメージ、そしてアニメーション」(『ゲンロン7』東浩紀編、株式会社ゲンロン、2017年)など。

第50回
シャガール!クレズマー!チンドン!
●「シャガールの聴いた音――クレズマーとイディッシュ演劇」武隈 喜一
●「チンドン・クレズマー 交流見聞録」大熊 ワタル・こぐれ みわぞう

  • 2018年7月14日(土) 午後3時~5時50分
  • 早稲田大学 戸山キャンパス33号館434号室

チラシPDFチラシPDF

●「シャガールの聴いた音――クレズマーとイディッシュ演劇」武隈 喜一

マルク・シャガール《緑の地の楽師》 1963年 リトグラフ

マルク・シャガール《緑の地の楽師》
1963年 リトグラフ

 

 シャガールが描いた楽師たちが奏でた音と、シャガールがパリに出る前に熱中したイディッシュ演劇について現在のニューヨークのユダヤ人文化とのかかわりの中で語ろうと思います。

●武隈 喜一(たけくま きいち)
1957年東京生まれ。上智大学外国語学部ロシア語学科、東京大学文学部露文科卒業。
出版社、通信社等を経て、1994年から1999年テレビ朝日モスクワ支局長。
2016年7月からニューヨーク勤務。

編訳『ロシア・アヴァンギャルドⅡ 演劇の十月』(国書刊行会、1988年)、
『ロシア・アヴァンギャルド I 未来派の実験』(同、1989年、共に共編)、
著書『黒いロシア 白いロシア―アヴァンギャルドの記憶』(水声社、2015年)など。

ニューヨークの文化と政治と生活を「あてらな通信 ニューヨーク篇」、
「メディアの現在」としてメール配信を続ける。
email: kiitake@hotmail.com

 

●「チンドン・クレズマー 交流見聞録」大熊 ワタル・こぐれ みわぞう

 30年ほど前、チンドンとクレズマーにほぼ同時に出会い、両者のシンクロニシティに惹かれてチンドン×クレズマーに取り組んで来ました。長らく欧米クレズマー・シーンとは離れた島国で想像のまま演奏して来ましたが、この数年、縁が重なって欧米シーンとの交流が進み、嬉しい出会いと発見の連続です。
 クレズマー再発見の歴史を振り返りつつ、欧米シーンとの交流の見聞を報告します。

●大熊 ワタル(おおくま わたる)
クラリネット、バスクラリネット、サックス、ボイス、他
1960年広島県生まれ。25歳頃、チンドン屋の世界に触れ、街頭でクラリネット修行をはじめる。
1997年、添田唖蝉坊の墓碑銘にちなみ自身のバンドをシカラムータCICALA-MVTAと命名。
シカラムータと平行して、さまざまなバンド、セッションでも身体性、即興性に富んだアプローチで
知られ、国内外でのツアーのほか、映画・演劇の音楽も手がける。
チンドンのほか、クレズマー、バルカン、ロマ音楽にも造詣が深く、2015年にはNYの歴史的
クレズマーフェスティバルに、ジンタらムータで招聘、絶賛された。
著作「ラフミュージック宣言 チンドン・パンク・ジャズ」(2000 インパクト出版会)など。
2017年、月刊みすず誌でチンドン・クレズマー海外公演レポートを連載。

●こぐれ みわぞう
マネジャー, チンドン太鼓, ゴロス, ヴォーカリスト, 箏奏者
6月10日千葉県千葉市生。
幼少時より箏曲山田流を始め、11歳で師範名取襲名。1997年ソウル・フラワー・モノノケ・サミットに
参加し、チンドン太鼓を始め、シカラムータ・ジンタらムータを中心に、ジャンルを問わず、
ダイナミックかつダンサブルな演奏スタイルで、新世代チンドンの第一人者として活躍。串田和美氏の
舞台などにも出演、唯一無二なチンドン奏者として、国内外で希有な存在感を放つ。
2015年16年、ジンタらムータでの海外(北米・ドイツ)公演が絶賛され、日本人としては稀有な
イディッシュ語での歌唱も高評を得る。


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